川澄奈穂美は感じる。「30代で、こんなにサッカーが楽しいなんて」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 そして、具体的なイメージを併せ持つ。

「フィジカルで負けている分、裏を取るときにスピードで勝負するのは無理。タイミングよく裏を取って、相手を下げながら少しずつ陣地を取っていく――。ミドルを生かすためにも(相手選手を)裏返す作業は絶対に必要ですよね」

 今後積み上げていく連係は、なでしこジャパンの生命線になるだろう。こうした流れをしっかりと掴む俯瞰の目を選手個々が持ち合わせていかなければならない。

 それにしても、レインでの経験で、より一段とサッカーに対する想いが増してきているかのように、川澄は実に楽しそうに語る。

「自分の中ではサッカーを楽しむというのは一番にあって、プロとしてやっている以上、初めて見にきてくれた人もサッカー玄人も楽しいって思ってもらえるようなプレーがしたい。その中で自覚や誇り、責任というのを常に持っていたいと思います」

 アメリカのリーグはオフと移動が激しく繰り返される。メンタルの切り替えや、コンディショニングなど、自らでコントロールしなければならないことも多い。川澄には経験上比べるものがある。高校、大学を経て、INACでプレーし、なでしこジャパンとしてワールドカップを制し、オリンピックで銀メダルも手にし、そしてオリンピックを逃す苦い経験もした。それらがあったからこそ、川澄は今、自分と向き合うことができている。

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