【なでしこ】ゼロからやり直す。北朝鮮戦の阪口夢穂が残したもの (2ページ目)
得点がないまま前半を折り返したことに若干の不安を抱きつつも、後半に入ると、佐々木監督は中島をボランチに、宮間を左サイドへスライドさせ、岩渕を投入する。現状で最も変化を生み出す最善のフォーメーションだった。これでゴールが生まれなければ、どうしようもない。
大儀見優季は潰されていたが、その分、2トップに入った横山がかなり自由に動いたところへ、左サイドに岩渕が入り、北朝鮮DF陣が後手後手になり始める。
攻め倒す日本に待望の決勝ゴールが生まれたのは80分のことだった。中島からスイッチが入った攻撃は、有吉、横山を経由し、宮間の狙いすましたクロスを、ファーサイドの岩渕が頭でGKの脇を差す。ゴールを確信した岩渕は全力で宮間のもとへ。満面の笑みで迎える宮間の両腕に飛び込んだ。"恩返し"――岩渕の想いがあふれ出ていた。
第3戦の敗戦以降、消化試合となった戦いで、なでしこたちは次へつなげる戦いにしようと、気持ちを奮い立たせた。「全員の気持ちが乗った」とは宮間だが、最終戦では失われていた連動がよみがえった。そのカギとなったのは阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)のポジショニングだ。この予選で、阪口が指揮官から託されていた役割は高い位置で攻撃に絡むこと。ゴールが遠いチーム状況では阪口の得点力は希望のひとつ。だが、ボランチ不足の中、阪口の相棒は一戦ごとに変わった。阪口が前めにポジションを取ることで、相棒が封じられると、日本は一気に守備のバランスが崩れる。結局、ゲーム中に守備を立て直すことができないままにリオへの切符を逃すことになった。
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