日本サッカー界の至宝・藤田俊哉がオランダで見る夢の続き

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 5月23日夜、国立競技場には約2万人が集った。

「藤田俊哉送別試合」と銘打たれた試合。ジャパン・ブルー対ジュビロ・スターズの一戦は3-4で後者が勝利を収めているものの、スコアを覚えているファンはきっと少ないだろう。

「トシヤ」

 熱さにいくばくかの寂しさが滲んだ歓声は、いつまでも止まなかった。カズ、ゴン、ヒデ、ナナミ......多くの戦友たちが同じピッチに立った。10番のユニフォームを着た、男の最後の舞台のために。

試合後のセレモニーでスタンドに手を振る藤田氏。今後はオランダで指導者人生をスタートさせる試合後のセレモニーでスタンドに手を振る藤田氏。今後はオランダで指導者人生をスタートさせる「僕はサッカーが大好きです。子どもの頃からサッカーで夢を見ました。これからも夢を見ていきたいと思います」

 試合後、花束を手に男はマイクで挨拶している。

 それはプロサッカー選手として晴れやかな、終わりの儀式。そして、プロのサッカー人として、はじまりの一歩でもあった。

「できれば、永遠にサッカー選手であることをやめたくないねー」

 藤田俊哉"選手"を取材していた折り、どこか淡々とした調子で喋ることの多い彼が、珍しくストレートに自らの心情を口にしていた。藤田氏にとって、サッカー選手であることは終わって欲しくない夢だった。

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