【日本代表】前田遼一「そりゃ、自分で点が取れれば取りたい」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 メディア対応などでは、常に冷静に受け答えする前田。試合中も黙々とプレイしていて、感情を表に出すことが少ない。そのため、FWの選手がよく漂わせているゴールへの強烈なエゴが、彼からはあまり伝わってこない。どちらかというと、周囲を生かすプレイに重きを置いているように見えたが、彼の内面は違った。

「そりゃ、自分で点が取れれば取りたいですよ。ゴールへの意欲もすごくあります。自分で点を取ったほうが、(監督の)評価も上がると思いますし。だから、自分が(点を)取れると思ったときは、どんどん狙っていきます。ただ、無理に取りにいくことはないですね。他の選手がフリーで、そこにボールを出せば決定的なチャンスになる場面で、自分が強引にシュートを打とうとは思わない。もちろん、代表はアピールする場でもあるんですけど、まず大事なのはチームの勝利ですから。この考えは、これから先も変わらないです」

 一方、ザッケローニ監督就任当初からメンバー入りしている前田は、この2年間のチームの成長をどう見ているのだろうか。

「代表は、チームとしての決まり事がすごく多いんですけど、みんながそれを忠実にこなしつつ、個人の良さを生かして、攻撃のバリエーションを増やしてきた。選手がお互いを理解し、信頼し合っている部分がたくさんあるので、そういうところにこのチームの強さを感じますね」

 同じ絵を描くことのできる選手がピッチ上に何人もいる。前田は、そこに今の代表の強さを見出しているようだ。しかし、その強い代表チームに生き残るためのサバイバルは、今後さらに熾烈さを増していく。前田はどうやって、その戦いを切り抜けていくのだろうか。

「W杯には、すごく出たいです。1998年のフランスW杯を見て以来、『いつかは自分も』という思いがありましたからね。今回のブラジルW杯は、その夢を叶えるチャンスですし、年齢的にも最後のチャンスだと思っています。そのために自分は何をすべきか……、う~ん、そこは難しいところですね。まあ、自分はすべての面でレベルアップしないといけないと思っています。特に、ペナルティーエリア内での動きですね。FWにとっていちばん大事なところなので、そこでの落ち着きとか、シュ-トの精度とか、もっと高めていかないといけない。あとは、とにかくチーム(ジュビロ)で結果を出していくだけです。そこで活躍し続ければ、代表に呼ばれると思いますから」

 もの静かな口調からは、逆に代表とW杯への強い思いが伝ってくる。ジュビロの歴代エースストライカーの中山と高原は、それぞれW杯の舞台を踏んだ。その系譜に連なる前田なら、夢の舞台に立てるに違いない。当然、日本の勝利にも貢献できるはずだ。

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