検索

【WBC】世界一連覇の陰で起きていた非情の守護神交代 9回のマウンドを託されたダルビッシュ有は「えっ、僕ですか⁉︎」と戸惑った (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

「投手陣には招集の際、『自分はこの場面でしか投げない』という考えは捨ててくれと伝えていました。野球の原点に立ち返り、打者一人ひとりと勝負してほしい、と。しかし、所属チームでエースや守護神を務める男たちにそれを強いることが、どれほど酷なことかもわかっていました」

 大会中に守護神が代わるというのは、ひとつ間違えれば大きなハレーションを起こしかねない。それでもチームが瓦解しなかったのは、それぞれが己の役割をまっとうしたからだ。

「ダルビッシュが(リリーフでの)初登板で役割を果たせたのは、8回を投げた馬原の踏ん張りがあったからです。彼も不調に苦しんでいましたが、2失点で踏みとどまり、結果的に5点リードでダルビッシュへとつないだ。もしあそこで崩れていたら、その重圧は計り知れないものになっていたはずです」

 アメリカ戦の翌日、与田はあらためて藤川と向き合った。配置転換への理解を求めるためである。藤川は静かに、短い言葉で「わかりました」とだけ応えたという。

「抑えの座を譲る球児の胸中は、察するに余りあります。彼はブルペンのリーダーであり、絶対的な存在でもありました。最後まで彼に大役をまっとうしてほしいという思いは、私のなかにもありました。それでも彼は、チームの勝利のために、普段どおりに振る舞い、後輩を支えてくれた。その献身こそが、最後に世界一という結果を手繰り寄せたのだと、僕は思っています」

つづく>>

著者プロフィール

  • 木村公一

    木村公一 (きむらこういち)

    獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。

フォトギャラリーを見る

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る