【WBC】世界一連覇の陰で起きていた非情の守護神交代 9回のマウンドを託されたダルビッシュ有は「えっ、僕ですか⁉︎」と戸惑った (2ページ目)
9回表の守りへ向かうダルビッシュに、田中将大が「力水」の入った紙コップを差し出す。ダルビッシュはそれを軽く口に含むと、残るブルペン陣一人ひとりと拳を合わせた。最後に与田とグータッチを交わし、ベルトを締め直す。そして、真っすぐな足取りでマウンドへと向かった。
ダルビッシュは、先頭のデレク・ジーターをショートゴロに打ち取ったが、つづくジミー・ロリンズには安打を許した。それでもデビッド・ライト、アダム・ダンを連続三振に仕留める圧巻のピッチングで、日本を決勝へと導いた。
【影を潜めた火の玉ストレート】
時計の針を、その一週間前のサンディエゴへ戻す。東京での第1ラウンドを勝ち上がった日本は、第2ラウンドが行なわれるサンディエゴに入った。
その第2ラウンドも3勝1敗で勝ち越した日本は準決勝に進出。だが、首脳陣には、ある不安が漂っていた。守護神・藤川の"不調"だ。第1、第2ラウンドで計4試合に登板した藤川は、被安打3、奪三振3、失点0と数字上はまったく文句のない結果だった。
ただ、メジャー公認球の滑りやすさと、レンガのように硬いマウンドが、全身のしなりを生かして投げる藤川のフォームを微妙に狂わせていた。「火の玉」と形容される藤川のストレートが影を潜めていることを、監督の原辰徳をはじめとする首脳陣は不安視していたのだ。与田が回想する。
「僕は、いかに変化球を操れているかという点に注目していました。球児には縦に大きく落ちる、いいカーブがありましたが、大会ではやや抜け気味だった。フォークも同様です。その点、ダルビッシュは球種も多く、うまくコントロールできている。僕もそう認識していました」
準決勝の前夜、山田はダルビッシュに「9回をまかせるかもしれない」と打診したが、ダルビッシュは「勘弁してくださいよ」と苦笑いで返していた。
一方で、与田には気がかりなことがあった。役割を譲ることになった藤川の心境である。
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