川﨑宗則と田内真翔の二遊間コンビがドバイで過ごす濃密な1カ月 野球不毛の地で咲いた新たな師弟関係 (3ページ目)
【川﨑宗則という生きた教材】
NPBは、世界中のプロリーグのなかでも屈指と言っていいほどコーチングスタッフが充実している。スタッフの数が多いだけでなく、「とにかく教えることが善」という風潮が今なお根強く残っている。
ずいぶん昔の話だが、ある外国人選手が、ある指導者からの執拗なコーチングをやんわり断ったところ、その指導者は「オレの言うとおりにしなくていいから、聞くふりだけしておいてくれ。そうしてくれれば、オレは仕事をしていることになるから」と囁いた。そんな逸話すら残っている。
春季キャンプでは、OBが臨時コーチとして訪れたり、解説者が即席の野球教室を開いたりするのも、見慣れた風景だ。
もちろん、それがプラスに作用する場面もあるだろう。しかし若い選手にとっては、あまりに多くの指導がかえって自分のスタイルを見失う原因にもなりかねない。
その点、まだ体が動く"現役選手"と一緒にプレーすることで得られる「生きたコーチング」は、理論を十分に咀嚼できないルーキーにとって格好の教科書となる。田内にとって、ここドバイで川﨑という"教科書"を目の当たりにできていることは、まさに何ものにも代えがたい経験と言えるだろう。
11月19日のチーム初戦。試合前、バックネット裏には川﨑と田内の姿があった。バッティングの感覚をつかむための最終調整として、川﨑はプラスチック製のボールをネットに向かって打ち込んでいる。
最初は一塁側に背中を向け、いわゆる"反対方向"への打球を確認。それが終わると、向きを変えて、今度は引っ張り方向へ。ネットに突き刺さるような鋭い打球を打ち分けながら、バットの角度を念入りにチェックしていく。もちろん、そのボールをトスしているのは田内である。
川﨑の調整が終わると、次は田内の番だ。大先輩のトスを受ける緊張からか、田内のバットから放たれた打球が川﨑に直撃してしまう。穴の開いたプラスチックボールなので大事には至らなかったが、それでも多少は痛いはずだ。
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