【プロ野球】オリックス元スカウトが回顧 金子千尋の逆指名決定後「1億円の冒険はできない」「なぜダルビッシュ有を入札しない」と猛反対された (3ページ目)
── 甲斐投手の1位、西投手の3位はどのようにして決まったのですか。
熊野 多数決です。9対1でした(笑)。もちろん1票は私です。2位は左腕と決まっていました。ドラフト当日、3位の段階になって、まだ西が残っていたのです。私は選択希望選手の名前を書く役目だったのですが、「西が残っているので行きますね」と、テーブルに陣取る球団関係者に言って、了承を得る前に名前を書き込んでいました(笑)。
── 西投手ですが、3年目の2011年に10勝をマークし、翌年にはノーヒットノーランを達成。金子投手と並び、オリックス投手陣を牽引しました。
熊野 ドラフトは何が起こるかわかりません。選手が期待どおりの成績を残してくれた時こそ、「獲っておいてよかったな」と心から思える瞬間であり、スカウト冥利に尽きます。千尋や西、そして阪神の才木浩人(2016年3位)にしても、彼らの活躍あってこそですね。
── ドラフト1、2位、そして3、4位、さらに5、6位と、素人目に見ても実力はかなり違うように感じます。
熊野 1、2位で獲る選手というのは、ある意味、活躍して当たり前のところもあります。スカウトとしては、3位以降の選手が予想を上回る活躍をしてくれたらうれしいですね。
── 素朴な疑問なのですが、ドラフト会場のテーブルにスカウト以外のフロントのお偉いさんが同席しているのはなぜなのですか。
熊野 上位指名の選手だと契約金1億円、下位でも何千万円という大金が動くわけです。いわば球団の財産を先物買いしているのです。選手の指名の順番など、責任者の了承を得なければいけないわけです。私はスカウト歴が長かったので、「企業だからそういうものだよな」と理解していたところはあります。
【獲っておけばよかったと後悔した選手は】
── 逆に「獲っておけばよかった」と後悔する選手は誰ですか?
熊野 ほんといい選手が多くて、それを言うとキリがないので考えないようにしています。とにかく、毎年新たな気持ちでスカウト活動に臨んでいました。
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