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【プロ野球】打者のレベルも上がっているのになぜ"投高打低"? 中垣征一郎が語る野球の成熟と本質 (4ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

「バッターのレベルが下がっているかのような投高打低っていう言い方はもうやめて、競技の成熟とともに現時点での着地点がここにある。そういう見方のほうが自然なんじゃないかと思います。バッターのレベルは上がっているし、確実によくなっているはずですから。ただ、イチロー(元オリックスほか)みたいなヒットメーカーがいるかと言われたら、いないかもしれません。
 
 でも、たとえば、鈴木誠也(カブス)や大谷翔平(ドジャース)が25年前の日本にいたとしたら、松井秀喜(元巨人ほか)に負けない、もしくはそれ以上の成績をきっと出していると思うんですよね。そういうことを考えてみても、『バッターのレベルが落ちている』っていうことは絶対にないと思うので」

【野球は特殊性の高いスポーツ】

 "投高"はともかく、"打低"はやめにしたい。ただ、本塁打が少なくなり、点が入りにくい試合が多くなり、そんなプロ野球は果たしてどうなのか、という声は簡単に消えそうにない、

「野球というスポーツがファンにとって面白くあり続けるために投高打低を解消したいんだったら、ルールから変えなきゃいけないっていう話になるんじゃないですか?」

 いかにも、MLBでは"投高打低"の解消に向けてルール変更に踏み切り、2023年からピッチクロックを導入。牽制の回数が制限された結果、盗塁数が倍増して得点力が上がった。

「そういうふうに、せっかくルールのなかで成熟させてきたものをファンが楽しんで......ということから外れてでも、変える価値があるのかどうか。日本でも変えるとなると、また大きな議論になる話だと思いますが、結論を出すのは容易ではないと思います。それだけ、特徴的なスポーツなんだと思います。ピッチャーとバッター、異なる競技で勝負しているようなもんですから。こういうスポーツはほかにないですし、そこが勝負の起点になっているわけですから、とても特殊性の高いスポーツ競技だなと思います」

 "投高打低"傾向の原因について、現場の声を聞きに行った結果、野球というスポーツの原点、本質までが浮かび上がってきた。投手と打者の勝負はこれからも続く。

「バッターがどういうふうに、レベルが上がったピッチャーを打っていくのか。それを見るのがこのスポーツの、野球の大きな醍醐味のひとつですよ」

(文中敬称略)

著者プロフィール

  • 高橋安幸

    高橋安幸 (たかはし・やすゆき)

    1965年、新潟県生まれ。 ベースボールライター。 日本大学芸術学部卒業。 出版社勤務を経てフリーランスとなり、雑誌「野球小僧」(現「野球太郎」)の創刊に参加。 主に昭和から平成にかけてのプロ野球をテーマとして精力的に取材・執筆する。 著書に『増補改訂版 伝説のプロ野球選手に会いに行く 球界黎明期編』(廣済堂文庫)、『根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男』(集英社文庫)など

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