【プロ野球】打者のレベルも上がっているのになぜ"投高打低"? 中垣征一郎が語る野球の成熟と本質 (3ページ目)
攻め手の投手に対して、打者は受け身。相手によって変化しなければいけない量は、当然、打者のほうが多くなる。だからといって、投手のほうが簡単なわけではなく、投手は10回に1回の失敗が命取りになる。対して打者は、極論すれば、10回のうち7回失敗しても大成功となる。このように、パフォーマンスの性質がまったく違うもので勝負し合っている。
「ということは、ピッチャーのレベルが先に上がった時、バッターはそれを追いかけることでしか、本当の意味での実戦的技能を磨くチャンスがない。野球というスポーツを外から見た場合、その図式がまず大前提にあるわけです。なので、『なんでこんな投高打低になっちゃうの?』というようなことを考える前に、そういう図式が前提にあるんだと、頭に入れておかなきゃいけないのかな、と思います」
【バッターのレベルは上がっている】
中垣の見解を受けて、かつてMLBで4割打者が消えた背景が想起される。すなわち、時代とともに投手全体の能力が上がり、4割を残せるだけのチャンスがなくなった。だが、それは打者のレベルが下がったためではない。時代とともに打者全体の能力も向上し、最高打率の打者と平均打率との差が縮まったため、4割打者が消えたといわれる。NPBで3割打者が消えそうな背景も、同様なのだろうか。
「スポーツとしての成熟度が上がれば上がるほど、バッターのほうが過去をスタンダードにしてしまった時、たぶん成績を上げるのは難しくなると思います。ただ、『2割8分を残せばものすごくいいバッターなんだ』っていう時代になってしまえば、競技がさらに成熟していった時に全体の打撃成績が上がる。もしかしたら、そういうことが起こるのかもしれないですね」
往年のプロ野球では、エースがリリーフでも投げて勝てていた。20勝どころか30勝、40勝もしていた。日本シリーズでエースが4連投して日本一になれた。じゃあ、当時のエースが今の時代に出現したとして、同じように登板できるかと言えば、まずあり得ない。それで勝てることも絶対に起こり得ない。打者のレベルは相当に上がっているのだ。
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