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ヤクルトを支えたユーティリティプレーヤー、荒木貴裕の野球人生を変えた三木肇、真中満との出会い (2ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文text by Shiratori Junichi

「これまではチームが求めているポジションに僕はいらなかった。でも、僕がプレーの幅を広げれば、自ずとチャンスは増えてくる。真中さんの言葉は本当にありがたかったですし、野球を長く続けられたきっかけになったと思っています」

 荒木は真中からの「ワクワクするような新しい挑戦」を受け入れたが、プロの野球選手といえど、人生で初めて守るポジションへのコンバートは簡単ではない。
「内野を守っていた頃には簡単そうに見えていた外野への打球も、実際にはボールが無回転だったり、風の影響を受けていたりして球の質が毎回違うなど、実際に守ってみなければわからないことがたくさんありました。"本職"の選手に及びませんが、ほかのポジションを任されている選手の気持ちが理解できるようになった気がしました」

 外野手に転向した2014年は、ショートに故障者が続出したこともあり、ショートとしても起用されるなど55試合に出場した。

 出場に備え、準備も怠らなかった。ひもが切れた時に備えて、ファーストミットと外野手用と内野手用のグローブをそれぞれ2個ずつ、合計6個を持参して試合に臨んだ。そして、レフトとして先発起用されることも多かった2015年には、73試合に出場。この年、一軍の監督に昇格した真中に率いられたチームは、リーグ優勝を成し遂げた。

【勝負強さの秘訣は「最悪の状況を考えること」】

 現役時代の荒木は、多くのポジションを守れるユーティリティー性に加えて、勝負強い打撃でもチームを支えた。なかでも91試合に出場した2017年シーズンは、打率. 207まがら6本塁打、25打点を記録。得点圏打率は.455に及んだ。

 荒木に勝負強さの秘訣を問うと、「それがわかっていたらいつでも結果が残せたでしょうし、もし伝授できるのなら、きっといい商売ができると思います(笑)。だから個人的な感覚ですが......」と前置きした上で、自分なりの集中力の高め方について言及した。

「チャンスで打席が回ってきたとしても、すぐに気持ちを切り替えて集中力を高められるわけではありません。僕の場合は、まずは目の前の状況を確認して、起こりうる最悪の状況と、それを避けるためにはどうすれば良いのかを考えながら打席に向かうようにしていました。頭の中を整理して『してはいけないこと』を考える習慣があったことが、結果として勝負強さにつながったのではないかと思います」

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