DeNAオースティンが今も誇る田中将大から放ったホームラン 「最高の人間から打ったからこそ特別な意味がある」
今年2月のキャンプ中、横浜DeNAベイスターズのタイラー・オースティンは、4月8日に巨人との今季初対決があることを知らされると、満面の笑みを浮かべた。
オースティンは、巨人に対して特別な感情を抱いたこともない。しかし今季の巨人には、オースティンが再会を楽しみにしている選手がいる。それがニューヨーク・ヤンキース時代のチームメイトであるマー君こと田中将大である。
昨年、セ・リーグの首位打者に輝いたDeNAのタイラー・オースティン photo by Koike Yoshihiroこの記事に関連する写真を見る
【ヤンキース時代のマー君との思い出】
「彼は大好きなチームメイトでした」とオースティンは語り、当時のエピソードを語ってくれた。
「メジャー昇格後、クラブハウスでできるだけみんなの邪魔をしてはいけないと、目立たないようにしようと思っていたのですが、タナカはとてもやさしく迎え入れてくれました。本当に感謝しています」
ふたりは投手と野手、日本人とアメリカ人、若手とベテランといった具合にすべてにおいて対照的で、本来なら親しくなる要素は少なかった。にもかかわらず、オースティンは田中と過ごした時間をこう振り返る。
「ベンチでよく話しました。日本のこと、野球のこと......楽しい会話をたくさんしました。彼は毎日『グッドモーニング』とあいさつしてくれました。メジャーのクラブハウスにいる若い選手にとって、そうした彼の気遣いは本当にうれしかったですし、心に残っています」
オースティンのメジャーデビューは、2016年8月13日、ヤンキーススタジアムでのレイズ戦だった。その試合、ヤンキースの先発は誰だったかオースティンに尋ねると、彼は即答した。
「タナカ」
田中はその試合に先発し、オースティンは「7番・ファースト」でスタメン出場した。そして2回裏の第1打席で、いきなりメジャー初本塁打の偉業を成し遂げたのだった。カウント2−2からの6球目を、ライトスタンドへ運ぶ鮮烈な一撃だった。
この試合のドラマは、それだけにとどまらなかった。オースティンのあと、8番打者として出場していたのもメジャー初出場の選手。その彼こそ、現在、大谷翔平(ドジャース)のライバルとして知られるアーロン・ジャッジだった。
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著者プロフィール
ブラッド・レフトン
1962年、米ミズーリ州セントルイス生まれ。地元ラジオ局で大リーグ取材に携わった後、92年ミシガン大学で修士号取得。その後、NHKの番組制作に携わるため来日。96年に帰国。現在、日米両国の雑誌やテレビでフリージャーナリストとして活躍中。日本人メジャーリーガーや日本でプレーする外国人選手の取材を積極的に行なっている。