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ベイスターズ日本一の陰で小園健太が吐露した苦悩の1年 「ずっと悩んでいた。どうやったらうまくいくんだろうって...」 (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

 ネガティブ──言葉としては負のイメージがつきまとうが、裏を返せば、これはアスリートに必要不可欠なものだ。勝ちたいから、結果を出したいから、常にそういった不安を抱えているからこそ、誰よりも練習に勤しむことができ、準備にあたることができる。そして思慮深く、慎重だからこそ、時に大胆に行動ができる。

 たとえばDeNAの選手は一見、明るくポジティブなプレイヤーが多いが、それはあくまでも自身を取り巻く被膜であって、結果を出している選手ほど、実際のところ繊細な人間性を持ち合わせている。だからネガティブだって構わない。

 不安を払しょくするほどの練習や準備ができ、果たして来季小園は、自信を持ってマウンドに上がることができるのか楽しみにしたい。

【深沢鳳介には絶対に負けたくない】

 高卒3年目、他球団を見れば活躍し始めた選手たちがちらほら目に入るようになってきた。「同級生は気になりますか?」と問うと、小園はかぶりを振って「あっ」という顔をした。

「他球団の同級生は気にならないんですが、僕としてはやっぱり深沢(鳳介)ってライバルがいるので、絶対に負けたくないなって」

 深沢は今年春にトミー・ジョン手術を行ない、現在はリハビリの最中だ。また、今季から育成契約となり、あらためて支配下登録を目指している。

「鳳介は親友でもあるんですけど、今は本当にリハビリを頑張っていて、きっと来シーズン上で投げてくれると思っています。鳳介だけには絶対に置いていかれないように、一緒に活躍できるように頑張りたいんです」

 今季、26年にぶりに日本シリーズを制覇したDeNA。小園は歓喜に沸いた一軍の試合を見ていたというが、正直、特別な感情は湧かなかったという。喜ばしいことだということは理解しつつも、チームに何の貢献もできていない人間であれば当然のことだろう。

「次は、深沢選手とともにあの場のど真ん中にいないといけませんね」と声をかけると、小園は「はい!」と力強く返事をした。

「先ほども言いましたが、僕のなかでは、来年はもう始まっているし、最高の準備をしてキャンプインを迎えたいと思っています。そこでしっかりアピールをして、開幕からチームの力になれるように」

 真価を問われる4年目の来季、この数年の苦労や葛藤が報われることを願ってやまない。小園がマウンドで輝く時、それは27年ぶりのリーグ優勝を引き寄せる大きな原動力になるはずだ。


小園健太(こぞの・けんた)/2003年4月9日、大阪府生まれ。市和歌山高から2021年ドラフト1位で横浜DeNAベイスターズから指名を受け入団。背番号はかつて三浦大輔監督がつけていた「18」を託された。1年目は体力強化に励み、2年目は一軍デビューこそなかったが、ファームで17試合に登板。最速152キロのストレートにカーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップなどの変化球も多彩で、高校時代から投球術を高く評価されている。

著者プロフィール

  • 石塚 隆

    石塚 隆 (いしづか・たかし)

    1972年、神奈川県出身。フリーランスライター。プロ野球などのスポーツを中心に、社会モノやサブカルチャーなど多ジャンルにわたり執筆。web Sportiva/週刊プレイボーイ/週刊ベースボール/集英社オンライン/文春野球/AERA dot./REAL SPORTS/etc...。現在Number Webにて横浜DeNAベイスターズコラム『ハマ街ダイアリー』連載中。趣味はサーフィン&トレイルランニング。鎌倉市在住

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