ドラフトで指名されなければ「人生負け組」なのか? 独立リーガーが戦う夢と現実
10月24日、プロ野球のドラフト会議が行なわれた。プロからの指名を待つ選手たちにとっては、運命を決める一日だ。これまで四国アイランドリーグplusでプレーする独立リーガーを長く取材してきたが、最後まで指名されることなくユニフォームを脱いだ選手を多く見てきた。それほどドラフトで指名されることは難しい。
では、NPBに行けなかった独立リーがーたちは「負け組」なのか? 彼らの目標は「NPBに入る」ことである以上、たしかに負けたのかもしれない。ただこの「負け」は、人生における「負け」ではない。
昨年のドラフトで徳島インディゴソックスから阪神に2位指名された椎葉剛 photo by Takata Hirofumiこの記事に関連する写真を見る
【やりきることの重要性】
かつて2007年のドラフトで香川オリーブガイナーズから東京ヤクルトスワローズに指名され、内野手として活躍した三輪正義(現・ヤクルト広報)がこんなことを話していた。
「プロ野球選手になることが、正解じゃないから」
NPBに進めばそれで、すべてが成功したわけではない。NPBに上がれば、またすぐ次の戦いが始まる。これまでよりも、さらに厳しい世界での競争が待っている。
2022年のドラフトでオリックスから育成4位指名された茶野篤政は、四国リーグとNPBの厳しさは「まったく違う」と言った。
「いや、今は今で厳しいんですけど、全然違います。厳しさが」
つまり「NPBに行くためにどうアピールすればいいのか?」と試行錯誤を続けた四国リーグ時代と、オリックスで支配下登録を目指すため、ひたすら安打を放ち続けるしかなかった日々の違いだ。
「なんなら独立リーグの『スカウトにアピールする!』っていうのよりも、『支配下になる!』っていう時のほうが、気持ち的にはかかっていた(前のめりだった)と思うので」
その結果、開幕前に支配下登録を勝ちとり、史上初となる育成入団新人選手の開幕戦先発出場を果たしている。
ドラフト指名されることなく独立リーガーとしてのキャリアを終えてしまっても、それは「負け」ではない。それは今後の人生における糧になる。NPBから指名されることよりも、もっと大切なことは「どれだけここでやりきったか?」ではないだろうか。
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著者プロフィール
高田博史 (たかた・ひろふみ)
1969年生まれ。徳島県出身。スポーツライターの故・永谷脩に薫陶を受けた後、四国を舞台にプロ野球独立リーグ、高校野球などを取材。専門誌、スポーツ紙、Web媒体などに原稿を寄稿している。四国アイランドリーグplusには2005年の創設時より密着し、ドラフト指名の瞬間を多く見続けてきた。『日本独立リーグWatch』(週刊ベースボール)での連載は2024年に19年目を迎える。『現場取材がすべて』がモットー。@gakeppuchi2024