ドラフトで指名されなければ「人生負け組」なのか? 独立リーガーが戦う夢と現実 (3ページ目)
アイランドリーガーによく尋ねる質問がある。「入団した前と後では、何か変わりましたか?」と。
ほとんどの選手が、自身の成長した部分について語ってくれる。精神面、技術面、体力面......入団した時から変わっていない選手なんて、まずいない。
ドラフト時期になれば、やれ「隠し玉」だの「苦労人」だのといった表現で、独立リーグの選手の記事が掲載されることが少なくない。
そんな時にいつも、いや、いつまでも話題に挙がるのが「こんなに給料が少ない」「環境がよくない」「練習時間を割いてアルバイトをしていた」などといった、いわゆるステレオタイプの独立リーグに対するイメージだ。
だがひとりの取材者として、そのイメージが彼らの本質をとらえていたかどうか、疑問に感じていた。
四国アイランドリーグを去る選手に、必ず尋ねてきた質問がある。「四国リーグに来て、よかったですか?」と。
ドラフトで指名を受けた選手が、「よかったです」と答えるのは当然だろう。だがそれ以外の、目標をかなえられずに現役を引退し、ユニフォームを脱いだ選手たちはどうだろうか。
彼らの口から「四国になんて来なければよかった」という類の愚痴は、一度も聞いたことがない。むしろ、「野球をするなら最高の環境だった」という声を何度も耳にしてきた。
なかには思うような結果を残せなかったり、ケガで苦しんだり、満足できないまま去った選手もいる。しかし、ネガティブな言葉が聞こえてこないのは、自分自身がどこまでも真摯にNPBを目指し、挑戦していた証しではないだろうか。
ここは挑戦の場である。野球をただ続けるためにある場所ではない。だからこそ、最後までやりきってユニフォームを脱いでほしいと思う。最後までやりきって野球を終えた時、たとえNPBに行けなくても、人生において負け組なんかじゃない。
たくましくなり、可能性にあふれた自分がそこにいる。その時立っている場所は、次の新たな人生へのスタート地点である。
『崖っぷちリーガー 徳島インディゴソックス、はぐれ者たちの再起』
『下剋上球児』著者・菊地高弘がプロデュースする
熱き魂注いだ新たなる<野球ノンフィクション>が誕生!
予算なし/グラウンドなし/悪夢の19連敗/選手の逮捕/監督とファンがケンカ
消滅寸前の弱小球団が11年連続ドラフト指名選手を輩出するチームへ
なぜ独立リーグの虎の穴へと躍進を遂げたのか?
とび職、不動産営業マン、クビになった社会人、挫折した甲子園スター
諦めの悪い男たちの「下剋上」
プロローグ
第1章 指名ラッシュ
椎葉剛 宮澤太成 井上絢登
シンクレア・ジョセフ・孝ノ助
谷口朝陽 藤田淳平
第2章 育成ノウハウ
荒井健司 殖栗正登 南啓介
第3章 徳島にプロ野球チームができた日
山田大二郎
第4章 漆黒の黎明期
小松崎大地 渡邊隆洋 山村裕也
第5章 諦めの悪い男たち
増田大輝 木下雄介 松嶋亮太
第6章 深淵から見た光
岸潤一郎 茶野篤政
終章 渇望
2024年ドラフト指名を待つ男たち
終わりに
徳島インディゴソックス年度別チーム成績&ドラフト指名選手
【著者】 高田博史 Hirofumi Takata
1969年生まれ。徳島県出身。スポーツライターの故・永谷脩に薫陶を受けた後、四国を舞台にプロ野球独立リーグ、高校野球などを取材。専門誌、スポーツ紙、Web媒体などに原稿を寄稿している。四国アイランドリーグplusには2005年の創設時より密着し、ドラフト指名の瞬間を多く見続けてきた。『日本独立リーグWatch』(週刊ベースボール)での連載は2024年に19年目を迎える。『現場取材がすべて』がモットー。@gakeppuchi2024
【編 集・プロデュース】 菊地高弘 Takahiro Kikuchi
1982年生まれ、東京都出身。雑誌『野球太郎』編集部員を経てライターとして独立。「菊地選手」名義で編集・執筆した『野球部あるある』(全3巻・集英社)は13万部のヒット作になった。2019年に上梓した『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)はTBS系日曜劇場の原案としてドラマ化された。近著に『野球ヲタ、投手コーチになる。元プロ監督と元生物部学生コーチの京大野球部革命』(KADOKAWA)がある。@kikuchiplayer
著者プロフィール
高田博史 (たかた・ひろふみ)
1969年生まれ。徳島県出身。スポーツライターの故・永谷脩に薫陶を受けた後、四国を舞台にプロ野球独立リーグ、高校野球などを取材。専門誌、スポーツ紙、Web媒体などに原稿を寄稿している。四国アイランドリーグplusには2005年の創設時より密着し、ドラフト指名の瞬間を多く見続けてきた。『日本独立リーグWatch』(週刊ベースボール)での連載は2024年に19年目を迎える。『現場取材がすべて』がモットー。@gakeppuchi2024
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