【現役引退】西武・増田達至が後輩たちに贈るメッセージ 「1日を悔いなく...」球団最多の194セーブ (3ページ目)
「どうしても疲れてきたり、今日は気持ちが乗らないという日もたぶんあると思います。それでも力を抜くのではなく、練習も試合前の調整だと思う。(うまくいかなくなった時に)けっこう考えるようになりましたね。そうやって取り組むのは、たぶん自分のモチベーションでもあると思います。1日1日悔いというか、やり残したことのないように臨んで試合を迎えるイメージです」
【8月に引退を決断】
36歳となる今季は長らく務めたクローザーから離れ、試合中盤から終盤の勝負どころを任された。ストレートの状態がよかった開幕当初は結果を残していたものの、打たれる試合が徐々に増えていき、5月27日に登録抹消。6月12日に再登録されたが、3日後に再び抹消されて以降、戦力として一軍に呼ばれることはなかった。
「毎年、1年1年が勝負だと思ってやってきました。今年もキャンプからしっかりと自分のなかでやってきたつもりでした。ただ、結果が思うようについてこなくて......。8月に引退を決断しました」
現役生活で楽しかった思い出は2019年の胴上げ投手だと語る一方、悔しい記憶は最近のほうが脳裏に刻まれているという。
「やっぱり打たれた時が、本当に自分の技術不足が痛感される時でもあったので。練習量で補っていこうという思いで、本当に悔いのないように練習だけはしっかりやっていました」
9月28日、本拠地ベルーナドームで通算560試合目の登板を果たし、引退セレモニーで超満員のファンに拍手で送り出されたあと、増田は現役最後の取材対応を行なった。囲まれた記者のひとりに後輩へのメッセージを聞かれると、前日の引退会見から何度も繰り返してきた言葉を残した。
「1日を悔いなく過ごしてほしいです。皆さんもいずれも引退する時が来ると思いますが、その時に悔いは残るだろうけど、それがどれだけ少ないかだと思うので。それが自分で納得できる悔いであったらいいんじゃないかと思います」
悔いを残さないことは不可能だからこそ、なるべく少なくしてほしい。ストイックに向き合った増田だからこそ、重みのあるメッセージだった。
増田達至(ますだ・たつし)/1988年4月23日、兵庫県生まれ。柳学園高(現・蒼開高)から福井工大、NTT西日本を経て2013年にドラフト1位で西武入団。 1年目からおもにリリーフとして42試合に登板し、15年には42ホールドポイントを挙げて最優秀中継ぎ投手に輝く。 16年からクローザーに転向。 20年は33セーブを挙げて、初のセーブ王のタイトルを獲得した
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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