2試合連続KOで栗山監督からリリーフ転向の打診 難色を示していた斎藤佑樹を翻意させた中嶋聡の言葉 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 これでワンアウト二、三塁となって、6番のルイス・クルーズにも初球、2球目とボールが先行。3球目のインコース低めのツーシームをレフト線へ2点タイムリーを打たれてしまいます。3人とも2ボールからの3球目を打たれる同じパターンでした。いずれもコースは悪くなかったし、それなりの手応えもありました。ボールが先行したことで、ほんのわずか、置きにいってしまったのか......プロ5年目、勝つことの難しさを痛感させられて、1つ目の勝ち星がほしいという気持ちがそうさせたのかもしれません。

 8点差がピッチングを変えたと言われたら、それも否定できません。8対3とされて、なお5点をリードした5回裏、(2本のヒットを打たれて)ワンアウト一、三塁となったところで栗山監督がダグアウトを出ました。この回を投げ切れば勝ちがついたのに......ここ(76球)でピッチャー交代です。

【栗山監督からのリリーフ転向の打診】

 今となっては、監督って大変だなと思います。もちろん選手だった当時、いろいろと思ったことはありましたし、たしかにこんなに早い交代なのかとも思いました。

 あの日は風がすごく強くてスライダーはやたらと曲がるし、フォークもよく落ちていました。ツーシームにもまるでシンカーのようなキレがあると感じていた覚えがあります。それでも僕が持っている感覚と監督が持つ感覚が違ってくるのは、選手には決してわからない監督の仕事だということなんだろうなと、今なら思えます。

 ただ、ピッチャーにとって白星は何よりの良薬になります。僕は高校の時、(早実の)和泉(実)監督に「9点を取られても10点を取り返せば勝てる」「最後の1点を取られないように必死で抑えろ」という野球を教わってきました。

 だから6回3失点で自分なりのピッチングをしたとしても、チームが負ければ「仕事をした」という感覚はありませんでした。もちろん高校野球とプロ野球は違いますから、栗山監督の采配は指揮官としてチームが勝つためのシンプルな決断をした......そこは当時もそう受け止めていました。それでも、ひとつの勝ち星がとにかくほしかったというのは正直な気持ちでした。

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