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2試合連続KOで栗山監督からリリーフ転向の打診 難色を示していた斎藤佑樹を翻意させた中嶋聡の言葉 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 2度目のチャンスはすぐに与えてもらいました(4月17日、イーグルス戦)。寒い仙台で2度目の先発を務めて、4回途中でノックアウトされました。その直後、栗山監督からリリーフをやらないかと持ちかけられました。でも、すぐには受け入れられなくて......やっぱり長年、先発としてやってきたプライドがあったんだと思います。

 その夜、仙台で中嶋(聡、現在のバファローズ監督、当時はファイターズのバッテリーコーチ兼捕手)さんと食事をした時、「リリーフもいいんじゃないか」という話をしていただきました。その話を聞いてから、今までこだわってきた先発のプライドって何だろうと考え始めたんです。

 中嶋さんは「短いイニングなら100パーセントの力で腕を振れるから、おまえの持ち味を発揮できるはずだ」と言ってくれました。「いい時の腕の振りはバッターのタイミングをずらせている」とも......そう言ってもらってから、僕はリリーフとしてのピッチングをイメージするようになりました。

 実際、中嶋さんに「先発の時に先を見て力を分散させてしまっていなかったか」「9回まで全力で投げ切るスタミナがあったとしても勝手に力をセーブして1イニングごとに全力を注げていなかったんじゃないか」と訊かれて、「だから強いボールを投げられないんだろう」とも言ってもらいました。ならば、中継ぎのつもりでまずは1イニングを全力で投げる、その感覚を身につけるためにリリーフに回るのも悪くないんじゃないかと思い始めました。

【リリーフは合っているんじゃないか】

 プロに入ってからずっと、中嶋さんは僕にとってすごく近い存在でした。叱るのが上手な方です。中嶋さんに叱られても嫌な感じがまったくしない。すぐに「わかりました」と思えました。厳しいし、的確なことを言ってくれる。でも優しいし、愛情がある。

 プロ1年目か2年目だったと思いますが、戸田のスワローズとの試合で僕が先発したとき、中嶋さんが「オレが行く」と志願してバッテリーを組んでくれたことがありました。その時、僕はけっこう打たれてしまったんですが、中嶋さんは「俺のサインのせいだ」ってジェスチャーで示してくれました。ベンチに戻ってから、よかった時には「今のはよかった」、悪かったら「ここにしっかり投げてくれば打たれない」「打たれたら俺のせいだから」と言ってくれるんです。あんなに実績のある大先輩がそんなふうに言ってくれたら、この人のことを信じて投げ込もうと思いますよね。

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