2試合連続KOで栗山監督からリリーフ転向の打診 難色を示していた斎藤佑樹を翻意させた中嶋聡の言葉

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

連載「斎藤佑樹、野球の旅〜ハンカチ王子の告白」第49回

 2015年、斎藤佑樹はプロ5年目を迎えた。ここまでの4年間で13勝16敗。前年の先発は6試合で、5年目もローテーションに入れる保証はなかった。このシーズン、ファイターズのローテーション候補は大谷翔平、ルイス・メンドーサ、浦野博司、木佐貫洋、吉川光夫、中村勝、上沢直之、新外国人のビクター・ガラテ。ここにベテランの武田勝、ルーキーの有原航平も加われば激戦は必至だった。

2015年、最初の登板となったロッテ戦で4回途中降板となり悔しい表情を見せる斎藤佑樹 photo by Sankei Visual2015年、最初の登板となったロッテ戦で4回途中降板となり悔しい表情を見せる斎藤佑樹 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【大量リードもまさかの4回途中で降板】

 あの年はキャンプから思うように調子が上がらず、紅白戦でもオープン戦でも結果が出たり、出なかったりのまま、開幕を迎えました。それでも4月(2日)の千葉でのマリーンズ戦は開幕から2カード目、6試合目です。僕はその試合での先発を告げられました。

 栗山(英樹)監督からは「いいフォームで投げられているし、体調も状態もいい。だからこそいいボールが投げられるわけで、でも、だからといって勝てるとは限らない。今年はいいボールを投げるというだけじゃなく、佑樹ならではの勝ち方を思い出してくれ」と言われていました。

 あの日は立ち上がりからいいテンポで投げられました(3回までに対戦した12人のうち10人に初球ストライク、残りの2人にも2球目までにストライク)。初球からどんどんストライクゾーンへ投げていくことができていたんです。細かいコントロールは気にせずにストライクゾーンで勝負する、その思い切りのよさがもたらすボールの勢いがあればバットを押し込める......見た目よりも強いボールが来ることでバッターはタイミングをずらされて、差し込まれていました。その結果、いいリズムで投げることができていたんです。

 しかも打線の援護があって、4回表を終わった時点で8−0という大量リードの展開になりました。そのせいではないと思いたいのですが、4回裏、ストライク先行のピッチングが一変してしまいます。

 初球、ストライクを投げられなくなってしまいました。4番の今江(敏晃)さんにボール球を続けてしまって、ツーボールナッシングからの3球目、アウトローへのカットボールをライト前へ運ばれます。次の5番、井口(資仁)さんに対しても初球、2球目とストライクゾーンへ投げることができず、ボール先行の3球目、インハイへ投げたシュートを合わされて、レフト線へツーベースヒットを打たれました。

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