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「巨人だからチャンスがないという選手の環境を変えたかった」元プロスカウト・香坂英典が語るトレード成功のための裏話 (4ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

「基本的に故障の有無は、トレードが成立に近づいた場合、お互いの担当者の間で共有し合うのが暗黙の了解です。またケガ、病気などがあっても、今後のプレーには支障がないと判断できるケースもある」

 ただ医療関係者が判明したとしても、守秘義務があるため教えてもらえない。

「それでも調べていけば、大体わかるものですけどね」

 ただこれがFAとなると、トレードとはやり方が変わってくる。

「要は来てくれるかどうかですからね。とはいえ、直接本人に話したりするとタンパリングになる。これはトレードも同じです。そこで、まずは選手本人の人間関係の調査は大事になります。家族、友人など、とくに近しい存在の人たちです。妻帯者であれば奥さんの意向、存在は大きかったかなと思います。

 僕が担当していた時はFA選手については、少なくとも3年前から調査していました。来てくれる気があるかどうかはもちろん、故障や性格、人間性など問題はないかなどは調べましたね。FAの3年前のキャンプや試合に視察に行った時は、必ず選手の写真を撮影し、FA交渉時に見せるリポートに添付しました。これのリポートは"これだけ前からあなたを追いかけていた"というメッセージになります。これは当時の球団編成本部からの指令として行なっていたことです」

 まさに調査が主目的といっていいのが、プロスカウトという仕事だ。

後編につづく>>


香坂英典(こうさか・ひでのり)/1957年10月19日、埼玉県生まれ。川越工業高から中央大を経て、79年ドラフト外で巨人に入団。4年目の83年にプロ初勝利を挙げるも、翌年現役を引退。引退後は打撃投手をはじめ、スコアラー、広報、プロスカウトなどを歴任。2020年に巨人を退団し、21年秋からクラブチームの全府中野球倶楽部でコーチを務めている

著者プロフィール

  • 木村公一

    木村公一 (きむらこういち)

    獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。

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