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「巨人だからチャンスがないという選手の環境を変えたかった」元プロスカウト・香坂英典が語るトレード成功のための裏話 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 そうした指示にすぐ対応できるように、2月のキャンプから視察行動を開始しますが、それまでの期間はシーズンオフだからといって、休んでもいられない。ドラフト指名選手、新外国人選手やトレード、戦力外選手の獲得などによる新加入戦力など、常に新陳代謝を繰り返す球界の情報収集は通年行なっていました。

「それだけに"準備"が必要です。プロ野球のチームにはいろいろな部署がありますが、プロスカウトほど準備が大事な部署もないですね」

 交換トレードとなると、どこで妥協点を見つけるのか重要になると香坂氏は語る。

「どの球団もトレードした選手が行った先で活躍されると困るというのが本音としてはあるようです。だから、同リーグ同士のトレードは比較的少なく、シーズン中となるとなおさらです。僕個人としてはトレードした結果の良し悪しというのは仕方のないものだと思うし、無責任な言い方になるかもしれないけれど、やはりやって見ないとわからないとしか言えません。だから、その想定の難しさは常にありましたね」

 また、巨人という伝統ある人気球団ゆえの事情もあったという。

「巨人はどこよりも常勝を課せられるという意味でも、注目されるチームです。そのため、ほかのチームなら我慢して使い続けることができても、巨人だからチャンスがないとか、現実にそうした状況もあったので......そういう選手には環境を変えてあげてチャンスをつかんでほしいという意味でトレードは個人的には積極的にしたかった。

 その反面、迎え入れた選手がそうした特殊な環境で能力を発揮できない場合もある。また逆に巨人のように多くのファンやマスコミから注目される環境が選手本人のモチベーションアップにつながるケースもあり、それがそれぞれどう作用するかの判断については正直いって難しいということもありました。だから、その正しい判断をするための調査をしっかりと行なうのです」

 さまざまな制約のなかでトレードを実現させるわけだが、1年に数件あるかどうか。トレードがないシーズンだってあった。それでも毎日、一軍、二軍を問わず球場に足を運び、視察球団の関係者、他球団プロスカウトらと情報交換を行なう。なにより重要になるのが、ケガの有無だ。

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