「巨人だからチャンスがないという選手の環境を変えたかった」元プロスカウト・香坂英典が語るトレード成功のための裏話 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 才能があるのに一軍出場のチャンスになかなか恵まれない選手には、当然、何かしらの理由がある。それを視察のなかで考えながら続けていく。

「高校時代に騒がれてプロ入りしたのに、一向に一軍に上がったという話を聞かない選手がいたとします。そんな選手は、技術よりも精神面での問題が大きかったりします。もともと弱気な性格だったり、数年やって壁にぶつかり意欲を失いかけていたり......。そうした選手ほど環境を変えると、本来の潜在能力を発揮するケースもあります」

"目の情報"とともに大事なのが"耳の情報"だ。たとえば、二軍の試合を見続けるなかで、「この選手なんで使われないんだろう」「二軍で打っているのに、一軍からまったく声がかからない」という選手がいたとする。そうした選手は、監督やコーチとうまくいっていないと言ったケースだってあると香坂氏は語る。

「練習もするし、実際にいいバッター。でも話を聞いてみると、"自分で限界を決めてしまっている"とか"自分の考え方はこう"とか決めてしまっている選手が意外に多い。コーチはその殻を破ってほしい。そういう選手は、どうしてもコーチとぶつかるんですよね。コーチだって放っておくわけにはいかない。これは見ているだけではわかりません。こんないさかいの情報は手を変え、品を変えすればキャッチできると思います。要は聞き込みです。こうした重要な情報をいかにつかむかどうかというところが大事になってきます」

 いずれにせよ、目や耳で情報を集め、GMなど編成本部から補強の指示が出た時、すぐに対応できるように準備するのだ。

【伝統ある人気球団ゆえの事情】

 トレード期間はそのシーズン中の7月31日までが期限で、それまでに補強が必要となる場合がある。そのシーズンの後半戦に向けて最後の補強のチャンスに賭ける。

「主力に故障者が出たとか、期待した選手が思ったほど結果を残せないとか。たとえば『左の中継ぎでいい投手はいないか』『長打が期待できる右打者がほしい』など、編成のトップから要請があります」

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