今永昇太とバウアーに移籍の可能性があっても、DeNAはなぜ左の強打者をドラフトで獲得? (3ページ目)
剛球のサイドハンドといえば、巨人の大勢が筆頭だが、彼の成功が松本の評価を上げた。スピードがあっても荒れ球は嫌われていたが、ストライクゾーンのなかで荒れる分には、むしろ打者にとっては厄介なボールとなる。大勢が証明してくれたその要素を、松本は十分に持っている。
DeNAでは、よく似たタイプの伊勢大夢が、剛球のままほどよく角がとれて、中継ぎでフル回転している。いいお手本になってくれるはずだ。
石田は、この秋のリーグ戦での投球を見て驚いた。オーバーハンドだったのが、スリークォーターよりまだちょっと低い腕の位置から投げていた。両サイド低めを突けるコントロールは以前のまま。アベレージは140キロ台前半でも、あの角度であの猛烈な腕の振りなら勝手にボールは動く。スライダー、フォーク、ツーシーム......速い系の変化球を低めに集め、しかもナチュラルに動くのは希少だ。
育成4位の庄司陽斗は身長184センチ、体重91キロの立派な体躯があって、実戦でのアベレージが145キロ前後、さらに縦と横のスライダーも鋭い。こんなサウスポーはなかなかいないのにこの順位での指名になったのは、ヒジを痛めた時期があったからだろう。
聖和学園高(宮城)では外野手として打線の主軸を担っていて、投手としての実績は少ない。プロ側からすれば評価の材料が少なすぎたのだろうが、こういう素材型は"高卒選手"のつもりで育成すればいい。大卒の選手でも一人前の投手になるには2、3年かかるのが当たり前となっている今のプロ野球。焦りは禁物である。個人的に庄司は、ソフトバンクで活躍する大関友久の再来になると期待している。
著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。
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