今永昇太とバウアーに移籍の可能性があっても、DeNAはなぜ左の強打者をドラフトで獲得?
10月26日にドラフト会議が終わって、2週間が経った。各球団は指名した選手たちへのあいさつに忙しい時期だ。今年も悲喜交々いろいろあったドラフトだったが、とくに印象に残ったチームについて、スカウトや球団関係者などの証言も参考に検証してみたい。今回は1位で3球団による競合の末、度会隆輝の交渉権を獲得したDeNAだ。
DeNAから1位指名された度会隆輝(写真右)と三浦大輔監督 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【左打者偏重指名は意図的か】
指名一覧
支配下ドラフト
1位 度会隆輝(ENEOS)/外野手/右投左打
2位 松本凌人(名城大)/投手/右投右打
3位 武田陸玖(山形中央高)/投手/左投左打
4位 石上泰輝(東洋大)/内野手/右投左打
5位 石田裕太郎(中央大)/投手/右投右打
6位 井上絢登(徳島インディゴソックス)/外野手/右投左打
育成ドラフト
1位 高見澤郁魅(敦賀気比高)/内野手/右投左打
2位 清水麻成(樹徳高)/投手/右投右打
3位 小笠原蒼(京都翔英高)/内野手/右投左打
4位 庄司陽斗(青森大)/投手/左投左打
5位 近藤大雅(専大北上高)/捕手/右投右打
1位の度会隆輝の指名には、正直ちょっと驚いた。今永昇太のポスティングでのメジャー移籍が現実味を増し、トレバー・バウアーの去就も不透明、そして停滞気味の先発投手陣......。そんなチーム事情を考えたら、まずは"投手"が最優先だと勝手に決めつけていた。実際、今年は大学生投手に逸材が多く、そのなかから誰を指名するのかに注目していた。
だが、DeNAが指名したのは、社会人屈指の強打者・度会だった。この指名を見て、ふと思い出したのが2019年のドラフトだ。この年、DeNAは桐蔭学園高の遊撃手・森敬人を1位で指名したのだ。度会同様、地元のスター候補だった。
度会の指名理由を後づけで挙げれば、地元・横浜高、ENEOSの看板選手で、華やかな雰囲気にスター性も高い。プロでも一級品の外野手守備力に、内野もこなせる汎用性。左投手の外角ゾーンへのボールを見極められるようになれば、足もあるだけに"3割打者の常連"になる可能性は十分にあり得る。魅力的な存在であるのは間違いない。
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著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。