投手四冠・山本由伸のKO劇の最大の理由はカーブ なぜ伝家の宝刀は封じられたのか (3ページ目)
つづく6回には1四球と3安打で2点を加えて山本をKO。2番手の山田修義から2番・中野が再びレフトに技ありのタイムリーを放ち、山本に自責点7を刻み込んだ。
【狙い球が絞りやすくなった】
「(山本は)カーブが入らなかったのかな。それで苦しくなったね」
試合後、オリックスの中嶋聡監督は言葉少なげに語った。
一方、左に右に2本のヒットを放った阪神の8番・木浪は山本の攻略法をこう振り返っている。
「狙いは基本的にストレートを待っていて、来た球に反応しました。ライト前へのヒットは1球で仕留められました」
粘り強さが特徴の阪神打線は、山本がカーブでストライクを思うようにとれなかった結果、狙い球を絞りやすくなった。そうして逆方向を意識しながらコンパクトなスイングを徹底し、強いボールや鋭く落ちるフォークに対応した。そうした攻撃が2023年日本シリーズ初戦、シーズン中ではなかなか見られない山本のKO劇につながった。
阪神にとって極めて大きな1勝となった一方、オリックスにすれば大エースで落としたのは痛恨の1敗だ。
試合後、「このままでは終われないか」と振られた山本はこう話した。
「日本一になるのがチームの目標なので、そこに向かってやります。もう1試合あるかもしれないし、ないかもしれないですけど、しっかり準備しておきたいなと思います」
はたして、山本にリベンジの機会は巡ってくるか。あるいは、阪神が勢いに乗って一気に走り抜けるのか。
後者の形すら予感させるような、セ・リーグ王者の見事なKO劇だった。
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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