オリックス中嶋聡監督の変貌に福本豊と山田久志は驚き「あの大雑把だった男が...」 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sankei Visual

福本 レギュラーになってもおっとりぼんぼん。のんびりしていて、まったくキャッチャータイプの性格じゃなかった。

山田 中嶋はいろんなチームを渡り歩いて、自分自身が変わって、チームも変えた。日本ハムの時に、選手兼任コーチの経験が大きかったと言ってたこともあった。選手とコーチ、両方の視点が持てるようになったと。

── 2019年にオリックスに戻られ、まずは二軍監督でした。

山田 春のキャンプに福本さんと臨時コーチで行った時、一度怒ったことがあってね。一軍より二軍の連中のほうが先に上がっていくんだよ。何か考えがあったんでしょうけど、「何を考えてるんだ!」って。

福本 選手に自主性を植えつけようとしたんやないか。上からあれやれ、これやれと言うんではなく、自分に足りないものを気づかせる。

山田 一軍と二軍は隣の球場でやってるのに、練習前の会議に中嶋が来てない時もあった。二軍と一軍を分けてくれという考えだったのかもしれないけど、口下手だからわからない。ちゃんと説明すればいいのに......最初はかなりギクシャクしてましたよ。

福本 それが今では一軍も二軍もうまくいってる感じやもんね。フロントとも。

山田 フロントについては、福本さんもよく知っている福良ですよ。とにかく中嶋は福良と仲がいい。同じ阪急、オリックスの選手としてプレーしてきて、日本ハムでも同じ。なんでも話せる間柄なんだろうけど、どっちも口下手で性格的にも似ているから間違いなく合う。

【巨人を倒した快感は忘れられない】

── リーグV3は球団としては3度目で、3年連続日本一を含むリーグ4連覇を達成した1975〜78年以来です。当時は福本さん、山田さん、加藤(秀司)さんといった主力が一番脂の乗っている時期でした。一人ひとりが役割を理解し、その戦いぶりは「大人の野球」と評されていました。

山田 76年の日本シリーズで初めて巨人を倒してね。巨人を倒してわかったのは、我々のなかにものすごく自信が生まれたということ。自信、誇り、達成感......巨人を倒すことってこういうことかと、あの気持ちよさは忘れないね。それを味わったら、「またかかってこい。もう一回やっつけてやる」ってなりましたよ。連覇の相手が巨人じゃなかったら、日本シリーズ3連覇はなかったかもしれないね。

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