オリックス中嶋聡監督の変貌に福本豊と山田久志は驚き「あの大雑把だった男が...」 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sankei Visual

福本 日本一になって、巨人にも勝って思ったのは、場慣れの大切さ。巨人に負けた71年、72年は球場の雰囲気にのまれてしまった。1つのフォアボールで大ピンチみたいな声援が起きて、フライが上がっただけでまた大歓声。「普通のフライやないか」と思いながら、知らず知らずのうちに雰囲気にのまれていたというかね。当時の後楽園は巨人一色で、阪急ファンなんか三塁側ベンチの上にちょっといただけ。とにかくあの時の阪急に足りんかったのは、場慣れやったとつくづく思うね。

── 巨人に敗れた71年、山田さんは22勝をマークし、福本さんは67盗塁で、阪急は41の貯金をつくりました。72年も山田さんは20勝、福本さんは世界新記録となる106盗塁で、貯金32。2位に14ゲーム差をつけました。巨人が相手でも負ける気はしなかったのではないですか。

山田 マスコミを含め、周りはみんなそう思っていました。今年は阪急だと。

福本 それでこっちもいけるんやないかなと思ってたら、雰囲気にのまれて。フワフワした感じが続いて、日本シリーズが終わった時に、「なんや自分じゃない自分が野球しとったな」、と思うたんです。

山田 あの時の巨人はV7、V8なんだけど、戦っていてそんなに強いとは思わなかった。ON(王貞治、長嶋茂雄)がすごいといっても、バンバン打たれるわけじゃない。でも、終わってみたら負けてる。波に乗れない、乗せてもらえなかった。そこがジャイアンツのしたたかさなんだろうね。

── 72年の時は、福本さんが25歳、山田さんが24歳、監督の西本幸雄さんが52歳。対して今のオリックスは、山本由伸選手が25歳で、宮城大弥選手や紅林弘太郎選手が20代前半、そして中嶋監督は54歳。1年、1年強くなっているチーム状況も含め、日本シリーズ3連覇の時よりもこの頃のほうが今に近い感じがします。

山田 チームとしてそういう見方はあるかもしれないけど、西本の御大とは今の中嶋みたいに選手は気安く口は聞けなかった。向こうから声をかけてくるなんてことはまずないし、監督との距離感やチームの雰囲気はまったく違うけどね。

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