神宮球場「ビールの売り子」に密着取材 重要なのはコミュニケーション能力、シフトに入るための「レギュラー争い」も? (3ページ目)
【売り子にもレギュラー争いがある?】
ちなみに、他球場でも売り子をしている人もいれば、大学卒業後もフリーターや他の仕事と掛け持ちしながら売り子を続けている人もおり、なかには20年以上も神宮球場で売り子を続けている女性もいるという。
「日中はOLをして、仕事が終わってから売り子をしている方もいますよ。ジムに通うような感覚なのかもしれません」(安留さん)
ただし、面接に合格したからといって、必ずしも希望どおりに働けるわけではない。日によって働ける人数が決まっているのに対して、売り子のアルバイトの登録数は400人もいるからだ。この日は160人が出勤していたが、ビール半額デーなどのイベントがある日は190人まで増員するそうだ。
男性スタッフのすばやい樽交換で販売時間を確保するこの記事に関連する写真を見るこの記事に関連する写真を見る「売り上げはもちろん、しっかり頑張っているかどうか、そういった点をしっかり精査して、シフトを組んでいます。結果を出せるかどうか、ちょっと厳しい世界です。新人研修の時に言っているのですが、"レギュラー争い"のようなものです」
木崎さんが言うように厳しい争いに勝ってこそ、希望どおりに現場に出られるというわけだ。さながら支配下登録を目指す育成契約選手のようだ。
神宮球場では、キリンビール(ハイネケンを含む)、アサヒビール、サッポロビール(エビスを含む)の3社の生ビールおよび、サワーやハイボールの売り子がいる。ちなみにコカ・コーラとサーティワンの売り子は、それぞれの会社で採用を行なっている。
木崎さんがシフトを組む際には「どこのユニフォームが似合うかも考えなければならない」のだそうだ。たしかに蛍光イエローのキリンビールのユニフォームと、アサヒビールのピンクのユニフォームとではあまりにも違う。似合うかどうかの差は大きいかもしれない。
カラフルなユニフォームはスタンド内で見つけやすいこの記事に関連する写真を見る 気になる給料形態は歩合制だ。つまり、ビールを売れば売るほど、売り子の収入は増える仕組みだ。ビール1杯につきインセンティブがいくら支払われるかなど詳細は企業秘密だが、安留さんによれば「多い人だと1日で2万円ぐらい稼いでいる」という。
ただ、ノルマは設けておらず、基本給は保証されている。その点はご安心あれ。
後編<一日700杯も!? 神宮球場・人気「ビールの売り子」の販売術「お客さんとアイコンタクト」「常連さんの前は20分おき」>を読む
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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