1試合700杯も!? 神宮球場・人気「ビールの売り子」の販売術「お客さんとアイコンタクト」「常連さんの前は20分おき」 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi
  • 立松尚積●撮影 photo by Tatematsu Naozumi/神谷年寿●動画 movie by Kamiya Toshihisa

【観客とアイコンタクト、常連の前は20分おき...売る工夫とは?】

 やりがいを感じているからこそ、3年間も続けられるのだろう。年数を重ねるごとに常連客も増えていったという。それでも、より多くビールを売るために工夫を怠らない。ちひろさんはこう説明する。

すばやいビール樽の交換は男性スタッフのすばやいビール樽の交換は男性スタッフのこの記事に関連する写真を見る「カップが空の方を見かけたらアイコンタクトをとることで、お客さんが『ビールがほしい』という意思を売り子に伝えやすいようにしています。いつも私から買ってくれるお客さんに対しては、20分ごとにその方の前を通るようにしています。

(髪につけた)お花は自分を主張できる部分でもあるので、いろいろな色が入っているものにすることでチャームポイントとして認識してもらえたらいいなと思っています。首には自分の高校のタオルを巻いていて、それによって高校野球が好きな方と話をするきっかけになっています」

 インタビューにもハキハキと答えてくれる彼女の最大の武器は、何よりもそのコミュニケーション力なのだろう。

 ピンクのユニフォームのアサヒビールの売り子をしているのは、2年目のももかさん。野球が大好きで「野球に関われる仕事がしたい」と考えた時に、思い浮かんだのがビールの売り子だった。

「幼い頃に球場で見た売り子さんがキラキラしていて、憧れていました」

「売り子は体力勝負だ」と話すももかさん「売り子は体力勝負だ」と話すももかさんこの記事に関連する写真を見る 野球ファンの彼女だが、じつはスワローズのファンではない。推しチームとスワローズの試合の際にはやはり気になるというが、試合中は当然ビールを売ることに専念している。

 仕事の大変なところを聞くと、「試合の最後のほうになると疲れてきちゃいます。体力が必要です」と答えてくれた。

 売り子が背負う樽は、アサヒビールとサッポロビールが約27杯分でおよそ10リットル。キリンビールが約18杯分、およそ7リットルも入っている。こんなにも重い樽を背負ってスタンドを上り下りするのだから、なかなかの重労働だ。それでも、彼女たちはそんなことをみじんも感じさせない。

「ビールを届けた時にお客さんの笑顔を見られた時が一番うれしい」と、ももかさん。売り子に健気な笑顔を向けられれば、客も自然に表情がゆるむだろう。

重たい樽を背負ってスタンドを歩き回るのは重労働だ重たい樽を背負ってスタンドを歩き回るのは重労働だこの記事に関連する写真を見る

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