秋広優人はなぜ高卒3年目で巨人の3番に定着できたのか 「3つのターニングポイント」を振り返る (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 ただし、秋広自身は3番という打順にプレッシャーを感じることはないようだ。

「うしろに(岡本)和真さんがいて、気楽に立たせてもらっているので。自分が打ってやろうというより、和真さんにつなごうという気持ちで立たせてもらっています」

 インタビュー前日にノーヒットに終わるなど、その時点で秋広のバットからは快音が消えていた。今の状態について聞きにくい状況だったが、秋広はあっけらかんとこう語った。

「正直言って、こうなることは予想していたというか、ここまで打てる状況が続くわけがないと思っていたので」

 そして、秋広は「だからこそ」と言葉を紡いだ。

「今まで意識してきたセンター方向とか、引き続き地道にやっていきます」

 ジャイアンツ球場で直射日光を浴びながら土にまみれていた昨年の今頃を思えば、空調の効いた東京ドームでの戦いは快適なのではないか。そう尋ねると、秋広は苦笑しながらこう答えた。

「東京ドームは日差しもないですからね。でも、二軍もすごくいい環境でやらせてもらっていました。なかなか一軍に上がれなくてしんどかったですけど、ずっと一軍で活躍することを目標にしていました」

 一軍と二軍とでは、観客の数もケタ違い。日増しに増えていく歓声は、秋広にどんな変化をもたらしているのだろうか。

「ファンの方の声援はグラウンドにいてもよく聞こえますし、すごく力になります。球場をパーっと見渡しても、自分のタオルが増えているなと感じますし、声をかけてもらうことも増えてすごくうれしいです。本当に幸せなことですし、これからもっともっとファンの方を喜ばせたいですね」

 5月3日には、背番号55の大先輩である松井秀喜氏と初対面を果たした。東京ドーム内の通路でわずかに言葉を交わしただけだが、秋広にとっては身の引き締まる出会いだったようだ。

「ジャイアンツの55番をつけさせてもらっている者として、直接お会いできてうれしかったです。松井さんからは『ジャイアンツを背負って頑張ってね』と言ってもらえたので、頑張りたい思いがいっそう強くなりました」

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