秋広優人はなぜ高卒3年目で巨人の3番に定着できたのか 「3つのターニングポイント」を振り返る (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

ターニングポイント①
4月22日・ヤクルト戦(神宮)プロ初ヒット

 まずは快進撃が始まった試合から。この日、7番・レフトでプロ初スタメンとなった秋広は1打席目で右中間にタイムリー二塁打を放った。これがプロ3年目での初安打になった。

「1打席目に出たのは大きかったのでは?」と水を向けると、秋広は高いトーンで「相当大きかったです」と認めた。

「打てなかったら、(ヒットを)ほしがってズルズルいっていたかもしれません」

 ヤクルト・小川泰弘に対して変化球2球で追い込まれたあと、カウント1ボール2ストライクからインコース寄りに甘く入ってきた140キロのストレートを打ち損じることなくとらえた。

 この一打には、秋広がファームで取り組んでいたことがわかりやすい結果となって現れていた。

 今季の秋広は尊敬する先輩の中田翔との自主トレでスタートしている。取り組んだのは、「縦振り」だった。

「翔さんから去年から『縦振り』を意識してホームランが増えたという話を聞いていて、多くの時間を使って縦振りを練習していました」

 もともと秋広のスイング軌道はボールに対して水平、ないしは斜め下に向かって切るような軌道だった。「縦振り」を習得することで、打球に角度をつけ長打を増やしたい思惑があった。

 ところが、フリーバッティングでは打てても、実戦になると秋広のバットは沈黙した。秋広は「抑えようと投げてくるピッチャーのボールを縦振りでとらえる難しさを実感しました」と振り返る。

 ファームに落ちた秋広は、二岡智宏二軍監督からある提案を受ける。それは「スイングの形をシンプルにしてはどうか?」というもの。「縦振り」に固執せず、素直に弾き返す形を模索した。

 そのなかで、秋広はある境地に行き着く。

「バットをボールに入れる角度は意識せず、『センター方向』を意識するようになりました。練習でも試合でも一番に考えています」

 センター返しを意識するようになると、すぐに結果が出るようになった。4月18日には一軍昇格。そして初ヒットの打球方向はセンター右だった。それから秋広の快進撃は始まっている。

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