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持っている男・斎藤佑樹が大学最後に放った名言「僕が持っているのは仲間です」はいかにして生まれたのか (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

【早慶による50年ぶりの優勝決定戦】

 早慶による優勝決定戦は50年ぶりということでした。僕としては慶應に負け続けていましたから、『いやいや、さすがにもう勝たないとダメだ、何度チャンスもらってると思ってるのに』という感覚でした。早慶戦が終わって(11月1日)、優勝決定戦(11月3日)までには一日の間がありました。その一日で僕、じつはフォームを変えているんです。

 そのことを覚えているのは、優勝決定戦の直後、当時はスポーツキャスターだった栗山(英樹)さんにインタビューを受けたからです。その時、栗山さんにフォームの話をしたのを、なぜかものすごくハッキリと覚えているんですよね。

 その時の僕はドラフトでファイターズに指名された直後で、当時の監督は梨田(昌孝)さんでした。もちろん栗山さんがのちにファイターズの監督になるなんて想像もしていません。でも栗山さんに『優勝決定戦でフォームを変えましたよね』と訊かれて「この人、すげぇ」と思いました。

 優勝決定戦までの一日の間に、左足を上げてから一拍置くようにしてみようと思いつきました。その効果がどこにあったのか、じつは今でもよくわからないのですが(苦笑)、でも二段モーションに近いイメージで、足を上げてから一拍の間(ま)をとってみたんです。もしかしたら体重移動の時、自分の重心を意識しながら移動させにいっていたのを、一拍置くことで我慢させて、そこから自然に重心移動が起こるように仕向けたかったのかもしれません。

 ちょっと難しい話ですが、身体の大きいところを動かそうと意識すると、どうしても小さいところに意識が向いて、身体の端が余計な動きをしちゃうんです。そうすると重心はまだ残った状態でどこかを崩して自分の動作をしようとしてしまうから、たとえば腕だけで投げようとしてしまう。つまり、身体が辻褄を合わせようとして、うまく力が伝わらなくなるんです。

 でも、一拍置くことで重心移動を待つことができれば、身体の小さな部分の余計な動きはなく重心移動だけで投げられますから、腕だけじゃなく、自分の身体の大きなところを使って投げられることになります。その結果、ボールにちゃんと力が伝わる......そんなことを意識していたような気がします。優勝決定戦の前日練習でキャッチボールをしていて、あっ、これだ、と思いついたんですよね。

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