源田壮亮が球界ナンバーワン遊撃手になるまでの知られざる過去「幻に終わった育成指名」「社会人1年目の大挫折」 (4ページ目)
乗田氏の声が弾んでいる。こういうのを指導者冥利というのだろう。
「試合数にして30試合ぐらいですか。しかもフルイニング、フル出場ですから。社会人の大会って、プロみたいに状態のいいグラウンドばかりじゃないんですよ。そういう過酷な条件のなかで1年間ノーエラーというのは、僕自身もショートをやっていたからわかるんですけど、ものすごいことなんです」
自らの手首やヒジを故障するほどノックを打ち込んで鍛え上げた愛弟子が、プロ野球を代表するショートストップに台頭し、来たるWBCでも日本代表の守りの要を務める。
「今の若い選手やこれからの選手たちにとっても、源田のケースはお手本になるような成功例だと思うんです。1年目に壁にぶち当たって、そのまま心が折れてしまうことって、社会人だけでなく、大学でもプロでもあると思うんです。でも源田はその経験を教訓にして、2年目に大成長した。こういう例は、じつは意外と少ないと思いますよ」
なぜ、源田はそこで踏みとどまることができたのか。
「自分がダメだったこと、つまり認識が甘かったことに気づいて、それを受け入れ、ひたむきに向き合った。そうした人としての素直さと謙虚さがあったからだと思います。だからこその"源田壮亮"なんです」
そんな激烈な"過去"があったことなど、「何のことですか?」と言わんばかりに、フワッと穏やかに微笑む侍ジャパンの集合写真。その穏やかな笑顔の陰に、じつは隠し持っている牙(きば)をむき出しにする瞬間を見逃してはならない。それこそが本当の「源田らしさ」なのだから。
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著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。
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