「亀新フィーバー」に沸く陰で、人生初の代打交代で大暴れするベテラン岡田彰布の姿に戦慄が走った (4ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

「百歩譲って、試合の途中ならまだしも、ゲームセットじゃないですか。こっちはスイッチを切るわけですから、誤審はありえないです。だいたい、相手は最後の最後まで邪魔だったヤクルトですから、ウチが勝っていたら大きなアドバンテージです。それが逆にもう1試合やることになっちゃった。あの誤審が、我々タイガースの選手全員の人生を狂わせたんです」

中村監督が放ったまさかのひと言

 30年経っても、亀山の疑問と悔恨は解消されていない。それでも当時、不本意すぎる試合を戦ったにもかかわらず、阪神は翌日からまた勝ち続けている。優勝に向かってチームが結束していたからこそではないだろうか。

「結束して、一丸でしたよ。ただ、監督がいらないことを言ったんですよね。7連勝を決めたあと、『今度、甲子園に戻る時には、みなさんに大きなお土産を持ち帰りたい』って。それを聞いて、一気にみんなカチカチになっちゃったんです。そこから緊張して、動かなくなって。しかも、急にバントのサインが増えて、失敗して怒られる選手もいて、練習するぞ、と」

 20日間、13試合の長期遠征中の東京。予定外で施設も手配していなかったためか、昔の巨人の多摩川グラウンドでバント練習となった。亀山自身、前半戦は「バントをしない2番打者」で、足があるからゲッツー崩れで残り、盗塁したら同じというスタイルだった。それが最後の最後、監督が力んでスタイルを崩し、堅実な野球をしようとしたことが残念だった。

「それで9月の終わり頃のことです。ベンチに座っているベテランの方たちが、『優勝旅行どこ行く?』みたいな話をするのが聞こえてきました。ゲームに出ている側はそんな余裕なかったですけど、じつはカチカチになってる僕らの気持ちをほぐすために言ってくれたと思うんです。そういう意味では、ベテラン、中堅、若手がよく噛み合っていたんですけど、勝ちきれなかったです」

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