斎藤佑樹「こんな打線、誰なら抑えられるの」。3年春の甲子園、横浜高校戦の大敗から得たもの

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

連載「斎藤佑樹、野球の旅〜ハンカチ王子の告白」第10回

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 2006年春、早実は18年ぶりにセンバツへの出場を果たした。斎藤佑樹は北海道栄との1回戦に先発。打っては2本のタイムリーで3打点、投げては被安打4、8奪三振の完封という活躍を見せ、北海道栄を圧倒する。これが斎藤の甲子園での初勝利だった。

関西高校との2日間にわたる激闘を制し、ベスト8入りを決めた早実の斎藤佑樹(写真右)関西高校との2日間にわたる激闘を制し、ベスト8入りを決めた早実の斎藤佑樹(写真右)この記事に関連する写真を見る

延長15回231球の死闘

 3年春のセンバツは僕にとってようやくたどり着いた甲子園でした。初めてのマウンドに立った北海道栄との試合では、さすがに感傷に浸りましたね。緊張もしましたし、緑の匂いが心地よくて「ああ、オレは今、本当に甲子園のマウンドに立って投げてるんだな......これってリアルなのかな」みたいなことを考えていました。

 1回戦は大会3日目でしたが、開会式のこともよく覚えています。センバツの開会式って僕だけじゃなくて、早実のみんなもすごく緊張してたんですよ。初めて出る甲子園で、慣れなくて......なにしろ早実のセンバツ出場は18年ぶりで、その間は夏も10年前に一度出ただけでしたからね。甲子園に出慣れた高校の選手たちの態度に「すげえなぁ」と驚かされました。

 常連校の選手は開会式で行進する前、「写真、撮ろう」って縦横無尽に動き回るんですよ。いろんな選手と記念写真を撮りまくって、「オレたち、甲子園にはいつも来てるんだぜ」的な雰囲気を出してくるんです。とくに横浜高校の選手たち(笑)。

 その年の夏は僕らも春に続いて2度目の甲子園でしたし、全国に顔見知りの選手も増えましたから、今度はあんな感じでいけるんじゃないかと思って(夏の開会式に)臨みましたが、やっぱり夏も無理でした。夏は横浜の選手とも写真は撮りましたし、愛工大名電の堂上(直倫/のちにドラゴンズ)とも撮りましたが、とてもとても、あんな雰囲気は出せませんでしたね(苦笑)。

 2回戦の相手は関西高校(岡山)でした。のちにファイターズで一緒にプレーするダース(・ロマーシュ・匡)選手がエースで、上田(剛史/のちにスワローズ)選手もいました。早実の引き分け再試合といえば夏の決勝での駒大苫小牧戦を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、じつは僕ら、センバツでも延長15回、引き分け再試合を経験しているんです。それがこの春のセンバツでの関西との試合でした。あの2試合は本当にドラマチックなことが起こりすぎました。

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