山川穂高、8番降格の屈辱に「ふざけるな」。2年越しで見えた明るい兆し「お尻がハマる感覚」 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

受け入れがたかった8番降格

 結果的に、この取り組みはうまくいかなかった。2020年夏にはフルスイングした際に右足首を負傷し、痛みを抱えたまま数日で戦線復帰したことが負の連鎖を深めていく。

「僕のなかでは痛くても打てると思っていました。でも、打つ瞬間にズキンと痛むから打てないじゃないですか。バッティングフォームがどんどん崩れて、最終的には取り返しがつかないところまでいきました」

 打撃の感覚が狂うなかで体の土台も崩れ、最終的に残った打率.205は、規定打席に到達した26人で最低だった。

 痛みを引きずったままオフに突入、自主トレでも思うように練習できずに2021年の開幕戦を迎える。札幌ドームでホームランを放った直後、一塁ベースを回った際に左足のハムストリングを肉離れした。復帰後は早く結果を残さなくてはと焦り、8年目は打率.232で終えた。

 長いトンネルに迷い込む山川に、SNSにはネガティブな声があふれた。目にするたび「見返してやる」と反骨心を燃やした一方、どうしても受け入れがたい現実があった。2018年に全試合で守り抜いた4番から、2021年は8番まで降格したことだ。

「屈辱でしたね。何も一軍を知らなかった3年目までとは違うので。4番を続けてホームラン王とMVPを獲って、優勝したこともあるので。そこから去年は8番になって、ふざけるなと思っていました。そのプライドがなくなったら終わりだと思うので。不調が原因で8番を打っている自分にムカついて。それでも打てないので、最後は自信がなくなっていましたね」

 もがき苦しむ主砲を復調させようと、毎日のように辻発彦監督は同じ言葉をかけ続けた。「前で打て」。だが、山川はすぐに耳を傾けられなかった。

「監督に言われたから『やります、打てました』というのは嫌なんです。監督は『お前が打っている時は前で打っているんだから、前で打て』と言うじゃないすか。でも、僕のなかで『いや、前は違うと思うんですよね』ってどこかにあるんですよ。もう少し早く聞いておけばよかったけど、そんなもんだと思うんですよね」

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