山川穂高、8番降格の屈辱に「ふざけるな」。2年越しで見えた明るい兆し「お尻がハマる感覚」 (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

紆余曲折で迎えた2021年末

 2年に及ぶ不振の入口は、たしかに打つポイントを変えたことだった。だが、裏を返せば向上心の表れでもある。こうした姿勢がなければ、2年連続のホームランキングもなかっただろう。

 だからこそトンネルの中でも、山川は自ら考えて取り組むことにこだわった。

「僕はバッティングのことを朝から晩まで考えているので、球場に行ったらそれを真っ先にやりたくて。自分で答えを見つけるのが、やっぱり一番正しいことなので。まだ打てていない選手は、言われたことをまずやってみてからでいいと思います。でも僕の場合、打った時期があるので。絶対これを超えられると思っていたので----」

 紆余曲折で迎えた2021年最終盤、山川は「やっぱり前かな」とたどり着いた。ラスト6試合は19打数8安打、3本塁打。猛打が炸裂し、確かな手応えが残った。

「前と言ってもいろんな前があるけど、僕はピッチャーが投げた瞬間に振るくらいの感覚を持っていて。最後にそれで打ったら打てて、監督からしたら『ほらな』っていう感じでしょうね。でも、難しいですよ。それを自分の感覚として持っておかないと、長続きしないので」

 打撃の達人たちが交わす会話は、暗黙知のような領域にある。周囲は「元のフォームに戻せ」と簡単に言うが、山川は「そんなもんじゃないですね。全然違います」と言いきる。

 ひとつ確かに言えるのは、苦しんだ2年があったから、"前で打つ"に戻ってきたということだ。

「構えた時にお尻がハマっている感覚がどうしてもほしかったんです。2017年にはそれがあって。もう1回その感覚がほしくて、チューブでトレーニングをしたりいろんなことをしてハマるようになった時、『あれ? 今年いけるかも』と思って。

 お尻がハマることによって足首が固まる。で、軸が決まる。左足を高く上げてもブレない。ブレないのでバットが前に出やすくなって、ポイントが前で捕まえられる。今、一番いい状態だと思います」

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