平石洋介は西武からのオファーを一度は断るも受諾。松井稼頭央の人間性と言葉に心が動かされた (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sportiva

 想いを紡ぎ、ひと息つく。表情を引き締めながらも、平石は笑みを浮かべて言った。

「1年、1年の積み重ねですから。いつか大輔がライオンズに戻ってきた時に、球団が僕を必要としてくれているかどうか......ですからね」

 今は西武という新たな挑戦の舞台で、指導者としての土台をまたイチから築いて行かなければならないのである。

【影響力のある選手にこそ苦言】

 平石が実際にチームを指導したのは、昨年11月の秋季練習での2週間のみであり、まだ全体を把握しきれていなかった。

 ただ、楽しみな素材は多いと感じた。平石が真っ先に名前を挙げたのが、今年2年目のブランドンだ。昨シーズン32試合で3本塁打を記録した、チームが期待する長距離砲を「なかなかいいバッティングをしていました」と評価していた。

「高卒1年目の選手とかもね、しっかりバットを振れている印象がありましたね。すぐに一軍で通用するかと言ったら、総合的にまだそのレベルではないんですけど、『おっ!』と思わせてくれるような選手が多かったですね」

 パ・リーグのライバルチームとして戦ってきた平石には、今の西武が抱えている課題を理解しているつもりだ。

 大きなところでは打線の再構築。選手の高齢化が進むなど、世代交代の必要も囁かれている。打撃コーチとして、テコ入れのために重要とするのは、選手に寄り添って指導すること。楽天、ソフトバンクでも重きを置いた、平石の身上だ。モチベーターとしての素養を持ち合わせていることは広く知れ渡っているが、「=選手と仲良し」とは違う。

「なんやろう?」と、平石が少しだけ訝しげに世間との温度差を言葉にする。

「『人徳だけで指導している』とか『選手に甘いんじゃないか』みたいな言われ方をすると、結構心外なんですよね。そこはね、人と人なんで僕が選手を愛していかないと、相手だって本音でしゃべってくれないし、練習にもつき合ってくれない。うわべだけじゃ人間関係なんて築けないですよ。周りが言いづらいことだって言うようにしていますし、そのなかでも、相手の心を尊重しているつもりなんでね」

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