平石洋介は西武からのオファーを一度は断るも受諾。松井稼頭央の人間性と言葉に心が動かされた (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sportiva

 胸を打たれた平石は、松井の人間味を再確認する。楽天時代からそうだった。

 平石が二軍監督だった時のことだ。再調整のためファームに来た松井に「ウォーミングアップに入る前の準備を徹底させています。カズさん(松井)もそこを大事にしているのはわかっていますが、二軍でもお願いします」と伝えると、松井は「わかりました」とうなずいた。

 それだけではない。5歳年上であっても、現場では「監督と選手」の立場を誰よりもわきまえ、必ず敬語で話すなど平石が指導しやすい環境をつくってくれたという。

 そんな松井の頼みだからこそ、最終的にコーチの打診を承諾した。

「一番の決め手はカズさんの人間性です。そこって結構、大きな要素だと思うんですよ。前から『また一緒に野球をやりたいな』っていう想いがありましたし、一度断ってもね、『力を貸してほしい』とか、熱い言葉を何度もいただきましたし。そら心揺れますよね」

【まさか平石が西武に来るとは...】

 松井の導きによって、平石はまさかの西武入団を果たしたわけだが、そこにはもうひとつ、大きな「まさか」も込められていた。

 西武のコーチを引き受けた平石は、ある人物に報告の連絡を入れた。

「まさか、平石がライオンズに来るとは思ってなかったよ」

 同年代である松坂大輔は平石のコーチ就任を喜んでくれた。昨年のシーズン中、二軍監督だった松井と「いつか稼頭央さんと僕と平石で、一緒に野球するのも楽しそうですね」と盛り上がった話をその時に聞かされ、平石も胸を躍らせた。

 松坂という縁も自身を西武に引き寄せたのではないか? そう問うと、認めるように「うん」と首肯し、噛みしめながら話した。

「最後にライオンズに戻った大輔に対して、特別な感情はもちろんありました。現役の終盤は故障で苦しい思いをしながら頑張ってきたから、1回リフレッシュしたい気持ちもわかります。大輔が言ってくれたように、いつか一緒にやれたらうれしいですけどね」

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