2021.07.25

山本昌が語る名将3人との秘話。星野、落合監督の順番が逆だったら現役を長くは「やれていなかった」

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 プロ野球の前半戦、セ・リーグは阪神タイガーズ、パ・リーグはオリックス・バファローズが優勝候補のソフトバンクを抑えて首位で折り返した。

「オリックスには宮城(大弥)君と山本(由伸)君というエースがいて、吉田(正尚)君という大黒柱がいる。野球は投手という点でいうとこのふたりのエースがいるのは大きいですね。勢いもあるし、優勝してもおかしくないですよ」

 山本昌さんは、ふたりのエースの活躍に目を細める。


星野仙一元監督(左)とのエピソードも語ってくれた山本昌さん(右)(写真は2000年当時のもの) 星野仙一元監督(左)とのエピソードも語ってくれた山本昌さん(右)(写真は2000年当時のもの)  プロ野球では若いエースが成長しつつある中、ひとつの時代の終わりを告げる発表があった。西武ライオンズの松坂大輔投手が今シーズン限りでの引退を表明したのだ。松坂は、ダルビッシュ有(パドレス)や田中将大(楽天)、菅野智之(巨人)、大野雄大(中日)らとともに先発完投を美学とする投手だった。

 山本昌さんもそういう哲学を持って投げ抜いた。

 変わりゆくエースというスタイル。

 中日ドラゴンズで32年間、現役生活をつづけ、エースとして君臨した山本昌さんは、今、エースという存在をどう見ているのだろうか。

「簡単に言うとチームが苦しい時に勝てる投手です」

 山本昌さんは、そう強調する。

「ケガに強いとか、ローテーションを守れるとか、いろいろありますが、エースが崩れたら負けなんだという強い精神力を持ち、チームを背負ってマウンドに立てる存在ですね」

 今、投手は、先発、中継ぎ、抑えの分業制がベースになっている。そのため、先発完投型のエースと呼ばれる選手が少なくなった感があるが、分業制は先発投手の役割にどんな影響を与えているのだろうか。

「今の時代、先発投手は完投にこだわらなくなっていますね。ただ、勝つ確率でいうと先発投手は7、8回まで投げて直接リリーフに繋いだほうが高くなると思うんです。でも、今は7、8回で中継ぎを入れることが多くて、そこで試合が動くことが多いですよね。それで勝ち星を失ったりするんです。その結果、先発の勝ちが減り、同時に200勝を達成する投手が減っているのかなと思いますね」

 200勝(日米通算)は黒田博樹が2016年に達成したが、それ以降は生まれていない。今一番、200勝に近いのが田中将大で181勝だが来年以降になるだろう。200勝投手の減少とともに先発に勝ち星が増えないのは分業制に加え、100球という球数制限が守られるようになり、勝敗を決する前に先発が交代してしまうことが多いからでもある。

「最後まで投げ切ることで、9回に点を取ったり、逆転勝ちして勝ち星を拾ったりするんです。もちろんその逆もありますけどね(苦笑)。今は、中6日が基本ローテーションで試合も143試合と多いじゃないですか。 僕は100球ではなく、120球まで増やして、先発が投げている中で勝ち星をつけていってほしいと思います。そうして、これから一人でも多くの200勝投手を出してほしいですね」

 エースは、いろんな制限の中で投げているが、勝ち星を挙げるのが難しくなっているのはそれだけはない。エースには相手チームもエースをぶつけてくるので、ただでさえ勝つのが難しい。山本昌さんも現役時代、エースをぶつけられ、特に巨人戦は毎回大変だったという。