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「逃げたら、どうなりますか」。アテネ五輪時の主将・宮本慎也が本戦直前に高木豊に漏らした言葉

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

アテネ五輪・守備走塁コーチ
高木豊が振り返る激闘 中編(前編:長嶋監督不在の重圧>>)

 アテネ五輪で、守備走塁コーチとして代表チームを支えた高木豊。初めて「オールプロ」で結成されたドリームチームの"束ね役"として、高木ら首脳陣がキャプテンに選んだのは宮本慎也だった。その選考理由や、宮本の苦悩が見えた場面を振り返る。

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アテネ五輪でキャプテンを務めた宮本慎也 photo by AFLO SPORTアテネ五輪でキャプテンを務めた宮本慎也 photo by AFLO SPORT――個性の強い選手が集まり、チームをまとめるのも苦労があったと思います。そんな中で、宮本さんをキャプテンに指名した理由は?

高木豊(以下:高木) 慎也は単刀直入なんです。チームが勝つために個々がやらなきゃいけないことをストレートに言う。首脳陣で話し合ってキャプテンを決める時、(高橋)由伸とどちらにするか迷ったんですよね。プレッシャーがかかる戦いだったので、選手たちをリラックスさせるという意味では由伸が適任だったかもしれませんが、短期決戦で時間が限られていることを考え、必要なことを端的に伝えられる慎也を指名しました。

 五輪では、傷の舐め合いなどをやっている暇はない。「(言われたことを)できない者は去れ」という感じの強いキャプテンでした。本人も、慣れないポジションを守ったりして必死だったと思いますけど。

――宮本さんの振る舞いで印象的だったことはありますか?

高木 アテネ五輪の本戦直前にイタリアで合宿をした時のことですね。生活を共にすることでコミュニケーションも増え、自然とチームの輪ができていったんですが、試合で選手たちが左右で違う手袋やリストバンドをしていて。「いったい何をしているんだろう」と思ったんです。

 選手に聞くと、「予選で共に戦ったけど、本戦で選ばれなかった選手たちの思いを一緒に連れてきている」と言うわけです。端から見れば、余計に自分たちにプレッシャーをかけているんじゃないか?とも思いましたが、その音頭をとったのが慎也だった。すべてはチームをまとめるために。本当にいろいろなことをしてくれました。

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