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アテネ五輪、台湾戦で日本ベンチに迫られた重要な決断。高木豊は中畑清に「わざと負けますか?」と聞いた

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

アテネ五輪・守備走塁コーチ
高木豊が振り返る激闘 後編(中編:キャプテン宮本慎也が背負ったもの>>)

 コーチとして中畑清監督代行を支えながら、アテネ五輪本戦を戦った高木豊。後編では、アマチュア最強チームのキューバとの戦い、よもやの敗戦を喫したオーストラリア戦、メダルを獲るための戦略の迷いなどを語った。

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アテネ五輪の台湾戦でホームインし、和田一浩(左)と抱き合う高橋由伸(右) photo by Reuters/AFLOアテネ五輪の台湾戦でホームインし、和田一浩(左)と抱き合う高橋由伸(右) photo by Reuters/AFLO――五輪では常に高い壁として立ちはだかったキューバ。そんな最大のライバル相手に、日本は予選リーグで初めて勝ちました。同試合では、先発の松坂大輔投手が右腕に打球を受けながら、投げ続けたシーンがありましたね。

高木豊(以下:高木)大輔に「どうだ?」と聞いた時、「ちょっと待ってください」と言ったそぶりから、かなりの痛みがあるんだろうなと思いました。ベンチ裏でユニフォームをめくると、二の腕にボールの縫い目の跡もついていましたからね。なので、ちょっと時間を置こうと思ったんですが、審判には早めの投手交代を促されました。大会の規定で、治療という目的でもなかなか延ばせないみたいで。

 そうこうしていると、大輔が手をグーパーグーパーし始めたんです。「握力はしっかりしているから投げられます」と言うので、「本当に大丈夫か?」と確認したら、「大丈夫です」と言ってマウンドに向かいました。普通は戦闘意欲がなくなるものですが、根性あるなと思いましたよ。

――松坂投手の力投もあってキューバに歴史的な勝利を挙げますが、伏兵のオーストラリアに、予選と準決勝の2度、敗戦を喫してしまいました。日本代表が普通に力を出せれば勝てる相手だったのではないですか?

高木 僕も勝てると思いましたよ。ただ、キューバに関しては大量のデータが手元にくるんですが、オーストラリアのデータはまったくなかったんです。当然、捕手の城島(健司)は「この打者は1球目を打つのか打たないのか?」などを確認したかっただろうし、(宮本)慎也も「足の速い打者は?」などと聞いてきました。

 でも、それに答えられない状況で、僕も「なんでデータがないんだ?」と他のスタッフに聞いたんですよね。そうしたら、「アマチュアのチームの時も負けたことがないし、大丈夫ですよ」と。準備不足であることは事実でした。

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