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稲村亜美の告白。イップスの苦悩「私にとってはダメージが大きかったです」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 立松尚積●写真 photo by Tatematsu Naozumi

 かつては始球式のために、普段は軟式球に触れないようにもしていた。「硬球と軟球では感触が違うので、感覚が狂ってしまう」という理由だった。こうした繊細な心配りやプロ意識が、ことイップスに関してはネガティブに作用してしまったのかもしれない。

 現在は肩もヒジも痛みはなくなり、コロナ禍の自粛期間には自宅トレーニングに励み体は健康そのものだ。あとは本来の感覚さえ取り戻せれば......と試行錯誤しているものの、思うようにいかない状況が続いている。

「もう、強制的に何かを変えないといけないんだろうなと思います」

 イップス経験者の野球解説者にアドバイスを求めたこともあった。その解説者は稲村さんにこんなアドバイスを送ったという。

「まずは自分がイップスであることを認めること。だから、周りに『イップスです』と言ったほうがいい」

 イップスであることを知られたくない。それはイップスに苦しむ者が共通して抱く感情に違いない。

「恥ずかしいから」

「弱みを見せたくないから」

 そんな心理が働き、人前で投げられなくなるケースも多い。稲村さんに助言した解説者も、そのことを伝えたかったのだろう。

 ここ2年ほどは始球式の仕事から離れているものの、再起したい思いは強い。稲村さんには夢があるからだ。

「あと2球団(巨人と広島)の試合で始球式をさせてもらえたら、プロ野球12球団すべてで始球式をしたことになるんです。それと、いつかメジャーリーグでも始球式をやりたいなと思っているんです。でも、コントロールを直さないと、乱闘になっちゃうかな(笑)」

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