元ベイスターズ倉本寿彦が培った「3ミリの成長」 くふうハヤテで「1日1日、うまくなっている」
倉本寿彦インタビュー(前編)
倉本寿彦の2025年シーズンが始まった。くふうハヤテベンチャーズ静岡に入団して2年目となるシーズン。NPBを出てさらなる円熟味を増した不屈の男の歩みは、遅くとも着実に前へと進んでいる。
「今年のハヤテはメンバーも大幅に変わって、そういう意味では寂しくもあり、一方で『こういう世界なんだよな』とあらためて感じますね。今年チームは"勝ちにこだわる"という方針を強く打ち出しています。楽しみですよね。
僕もチームの年長者ですから、当然責任も感じているので、ひとつでも多くチームを勝利に導きたい。個人の目標としても、NPB復帰に挑戦することは同じでも、『やり残したことがあるから戻りたい』ではなく、今は『やれるから挑戦したい』という思いになっています」
昨年からNPBファームの新球団・くふうハヤテベンチャーズ静岡でプレーする倉本寿彦 写真提供/倉本寿彦茅ヶ崎後援会この記事に関連する写真を見る
【野球がうまくなっている】
今年1月、倉本は34歳になった。2015年に横浜DeNAベイスターズに入団してから11年目のシーズンとなる。2022年にベイスターズを退団した時は、ギリギリまで引退に気持ちが傾いたこともあった。だが倉本は、もう一度あの場所(NPB)に戻ることをモチベーションにして立ち上がった。
2023年は古巣である社会人野球の日本新薬に復帰し、昨年はNPBファームの新球団であるくふうハヤテベンチャーズ静岡へ。春先の故障で出場試合数こそ少ないながら、打率.349と結果を残し、今年も開幕から「3番・サード」としてチームの中軸を担う。
「本当はもう辞めていたかもしれないのに、今年もまたこうして開幕を迎えられる。本当にタイミングと縁があったんですよね。去年のハヤテでの1年間、僕のなかで勉強になった部分がすごくありました。数字も大事かもしれないけど、それ以上に今できるプレーのなかで、当たり前のことでも1日1日、自分に力がついているなと。野球がうまくなっているなという実感を、毎日積み重ねることができた。
特にバッティングに関しては年を重ねるごとにつながるものがあって、たとえば"逆方向"というのも、一昨年ぐらいから本当の意味で"自分の一番いい形"として引き出しにすることができているんです。プロに入る前、門田博光さんに言われた『信念を持ってやり続けること』は、今でもずっと僕のなかで生き続けています。いろんな遠回りをして、初めてのことも経験して、人間的にも器がちょっと大きくなったのかな。おそらく3ミリぐらいですけどね(笑)」
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著者プロフィール
村瀬秀信 (むらせ・ひでのぶ)
1975年生まれ。神奈川県出身。茅ケ崎西浜高校野球部卒。主な著書に『止めたバットでツーベース 村瀬秀信 野球短編自撰集』、『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史』、『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』など。近著に『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』がある。