ヤクルト1位木澤尚文が155キロを投げる理由。SNSとテクノロジーを駆使して成長 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 雑誌や本、テレビくらいしか教材がなかった昭和の頃と違い、令和の今はインターネット上に情報があふれている。プロ野球の各球場にはトラックマンやホークアイという弾道測定器が設置されるなど、テクノロジーの導入は進むばかりだ。リーズナブルな値段で持ち運びにも便利なラプソードは、アマチュアにも出回るほど一般的になってきた。

 球の軌道や回転軸などを計測できるラプソードを木澤は活用し、パフォーマンスアップにつなげているという。

「自分の状態を数字で見られるので、バロメーターにもなります。主に見るのは球速、回転数、回転効率、変化量ですね。試合前に測って、試合中の打たれ方やバッターの反応を見て、自分が投げている感覚とのギャップを埋めていったりします」

 たとえば、普段より真っすぐのシュート成分が多い場合、左打者の外角にはストレートを投げ、内角を突く際にはカットボールを多用する。シュート成分の多い真っすぐを左打者の内角に投げれば、真ん中方向に変化して打ち頃になるからだ。

 変化球を効果的に使うためにも、ラプソードで球質を数値化できるのはメリットが大きい。たとえば一般的なスプリットは1分間に約1100回転とされるが、木澤のそれは1500〜1700回転ある。どうすれば回転数を減らし、もっと落差を出せるか。

 当初はそう考えたが、あるとき発想を変えた。ラプソードで変化量を見ると、シュート成分が多かったからだ。自分では「落ちるボール」として投じているスプリットだが、実際にはツーシームのような変化をしている。ならば、ツーシームとして使えばいい。

「僕の変化量だったら、別に落とそうとしなくてもいいかなと思いました。右バッターからすれば、食い込んできてちょっと沈むような軌道なので、それはそれで厄介な球になるのかなと。自分が理想とするスプリットとのギャップは感じましたけど、逆にこうやって新しい使い方をできるのはラプソードのいいところだと思います」

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