古田敦也は打倒西武のためビデオ地獄「ノイローゼになるんちゃうか」 (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――広沢克己(現・広澤克実)さんや、荒木大輔さんなど、スワローズナインが、「ホテルの古田の部屋にはビデオが山積みされていた」と言っていました。

古田 あぁ、ありましたね。全体ミーティング用のビデオとは別に、僕の部屋にテレビとビデオが一体化したテレビデオがありました。ビデオテープは......、どれくらいかな? ズラーッと並んでいました。100本どころじゃないですね。だから、常にビデオは見ていましたよ。西武投手陣のものじゃなく、すべてバッターのビデオばかりでした。

――ビデオを見たライオンズ打線の印象は?

古田 僕らはいつも、テレビニュースでしかパ・リーグの選手を見ていないから、いつも「打った場面」ばかり見ているんです。でも、数字を見たら、2割7分~8分の成績。だから、イメージにとらわれて過大評価しないように、テレビ局の知り合いのディレクターに頼んで、打っている場面だけじゃなく、凡打のシーンも見るようにしていました。その結果、打線に関しては「負けてないな。いい勝負かな?」って思っていました。でも、投手力は圧倒的に西武が上でしたけど(笑)。

【「勝てる」とは思わないけど、「負ける」とも思わなかった】

当時を振り返る古田氏 photo by Hasegawa Shoichi当時を振り返る古田氏 photo by Hasegawa Shoichi――打線に関しては「スワローズもライオンズも互角だ。負けていない」という印象を持って、日本シリーズに臨んだんですね。

古田 戦前にそこまでは思っていなかったけど、シリーズが始まって戦っていくうちに、打線に関しては「全然、負けてないな」と思うようになりました。ただ、ピッチャーはすごかったから、「オレたちはすごいチームと戦っているな」と思っていましたね。

――当然、シリーズ本番中も、ホテルではビデオをずっと見ているわけですよね。

古田 見ていましたね。ずっと見ていましたからね、「ノイローゼになるんちゃうか?」っていうぐらい(笑)。目をつぶっても瞼の裏に映像が残っているんですから。

――先ほど、戦前の予想では「ライオンズ圧倒的有利」という報道が多かったとのことでしたが、古田さんご自身はどうお考えでしたか?

古田 具体的に「何勝何敗でどっちが勝つ」とか、皮算用はしなかったです。結果がどうなるかなんて、考えてもわからないんだから。でも、「西武は強いんだろうな」とは思っていました。「負けるだろう」とは思っていなかったけど、「勝てるぞ」と、すごく自信満々でいけるほどでもないし、自分たちに実力があるとも思っていなかったです。ただ、「西武と戦うのか、楽しみだな。いっちょ、やってやるか!」という感じだったと思いますね。

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