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西武・栗山巧が積み重ねた1806安打の価値。
「1本打つのが大変」の真意 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 2018年4月20日のロッテ戦で8回、代打でライト前タイムリーを放って勝利を引き寄せたあと、栗山はそう話している。

 この年、27年ぶりの開幕8連勝を飾ったチームは逆転勝利を重ねた。なぜ、大差がついてもあきらめずに戦えるのか。誰より長く西武のユニフォームを着てきた、栗山だからこその答えがあった。

「塁に出て、つながっていけばビッグイニングになるのではという期待を持ちながら、点が離れてもみんなやっていると思います。それは、ここ最近に限ったことではなく、ずっとやって来たことの積み重ねが結果として表われていると思います。何年も前からやっていることじゃないですか。あきらめずにやる」

 チームについて語った言葉は、その一員である栗山の姿勢もよく表している。

 ベテランの位置づけになったここ数年、栗山の言葉を解せないことがしばしばあった。高い技術で本塁打やタイムリー安打を打っても、「たまたま」「偶然」と繰り返すのだ。

 なかにはラッキーな1本があるにしても、これほど多くのヒットを「たまたま」打てるわけがない。明確な狙いがあるはずだ。いくらそうぶつけても、栗山から返ってくる答えは「たまたま」だった。

 その真意がわかったのは今夏、ちょうど1800本目のヒットについて聞いた時だ。8月24日の楽天戦で3回、一死一、二塁からライトに勝ち越しタイムリーを放った場面である。

 相手の宋家豪が投じた初球は、145kmのシュートが外角高めに外れた。続く2球目、栗山は外角低めのチェンジアップをライトに引っ張り、勝ち越し点を呼び込んだ。

 同じコースにちょうど10km遅い球が似たような軌道で来たから、自分のポイントまで呼び込み、うまく弾き返すことができたのだろうか。

「いや、そんなことないです。結果、打ったのはたまたまです」

 右投手の投げるシュートとチェンジアップは、ボールが同じような回転をしながら、左打者の外角に逃げていく。最近では「ピッチトンネル」という概念があるが、シュートとチェンジアップの似たような軌道を思い浮かべれば、両者の見極めが簡単でないと想像できるだろう。

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