2019.09.02

山田哲人の失敗ゼロの盗塁術。
今永昇太は「まるで幽霊」とお手上げ

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

「一塁走者としての山田哲人選手について取材しています」

 8月29日、DeNA対ヤクルト(横浜スタジアム)の試合前。両チームの選手や関係者に質問して回ると、誰もが「スピードがすばらしいですよね」と口を揃えた。

昨年から続く連続盗塁成功の日本記録も37に伸ばしているヤクルト・山田哲人 前日の試合で、山田は今季29個目の盗塁を決め、昨年から続く連続盗塁成功記録を34に伸ばしていた。ヤクルトの河田雄祐・外野守備走塁コーチは「走るという気持ちが強いことが一番だよね」と言って、こう続けた。

「構えてからスタートを切って、トップに入るまでの速さは日本一だと思います。なおかつ、今年は成功を重ねていくなかでバッテリーの配球を読んで、変化球のタイミングでうまく走ることもあった。ここ試合はいつもよりスタートは遅かったんですけど、それを塁間のスピードで補った。だから、最後のスライディングも生きてくる。ポテンシャルはもちろんだけど、そのあたりの技術もすばらしい」

 その河田コーチのコメントを裏づけるように、前田真吾トレーナーは山田のポテンシャルの高さについてこう語る。

30メートル走のタイムは、チームトップの塩見泰隆に匹敵するか、それ以上のものはあると思います。なによりゼロからトップにいくまでのスピードがすごい。それは、体は細身ですけど、パワーを秘めているからスタートの時にグッと力を出せるので、トップのスピードが速くなるんです。

 あとは、アウトかセーフかという時の集中力ですよね。メリハリというか、ここぞという時のスタートや足の回転の速さ。アップの時はわりと省エネモードなんですが、『このダッシュは本気でやってみよう』と言うと、スタートから全然違います(笑)」

 観察眼に長けている雄平に話を聞くと、「僕に盗塁のことを聞きますか」と苦笑いしながら答えてくれた。

「僕は警戒されていないなかで走る勇気というんですかね……そこが欠けているのでなかなかスタートが切れない。でも哲人は警戒されているなかで走って、しかも失敗しない。すごいですよね。盗塁に関しては、ナンバーワンでしょう」