「落ちるところまで落ちた」ドラ1。寺島成輝が探す浮上のきっかけ (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「今、その時の感情を思い出すのは難しいんですけど......正直、それまでは意識しなくてもうまくいっていたことができなくなった。そのもどかしさというか。『なんでやねん』という感情だったと思います」

 7月に戸田球場を訪れた時には、「僕を取材しても仕方ないですよ」と寺島は小さく笑った。その3日前に一軍の阪神戦に先発するも、2回を4安打、4四球、6失点で敗戦投手になっていた。球場から寮へ続く道を歩きながら、その登板について話してくれたのだった。

「あの試合では、真っすぐで空振りも取れましたし、ゾーンに入ればなんとかなるという感覚はありました。ただ、2回に二死から投手(小野泰己)への初球をボールにしてしまったことで『四球はよくない』という雑念が入ってきて、結局、歩かせてしまったことで『やばいぞ』となり、そこからストライクが入らず、自分との戦いになってしまったんです」

 マウンドに集まった野手陣からは「20歳なんだからもっと躍動感を出して、弾けてもいいんじゃないか」とアドバイスがあったという。

「次からはカウントが3ボールだろうが、投げ方の感覚とかは気にせず、低レベルかもしれないですけど、真っすぐを真ん中にぶち込もうと。今まではコーナーを狙うために7割から9割の力で投げていたのですが、それじゃダメだということがわかりました。落ちるところまで落ちたので、あの結果をプラスにしていきたいですね」

 9月6日、寺島は二軍の試合で神宮球場に姿を見せた。室内練習場から球場へ向かう道で「こっちに入りたいですよね」と、左側に見える一軍のクラブハウスを見てつぶやいた。一軍でノックアウトされた直後は、二軍で4試合に登板して3勝0敗、211/3を自責点1で抑える好投を見せていた。

「感覚が戻ったというより、完全に開き直って、どんな形でもいいから抑えてやろうと。打たれてもいいからひたすら真ん中に投げようと。ただ、少しよくないとストライクを欲しがって悪くなったり、ねじ伏せてやろうとしたら力みすぎてダメになったり......。でもこの前は、147キロが出たので150キロまであと3キロです(笑)。まだシーズンは残っているので、二軍で結果を出して、シーズン終盤に一軍でチャンスをもらえたら......一軍で1勝したいです」

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