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練習量より「己を知る」で変心。
西武・金子侑司は盗塁王を獲得した (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

 このとき、シーズン終盤、右膝痛を押して試合に出続けた影響で2017年シーズンは出遅れたが、橋上の言葉をきっかけに金子が意識を変えたのは確かだ。

「盗塁王を獲れたのは、もちろん走塁コーチの指導があってのことですが、私が言ったことを少しは理解してくれたのかな、と思います。ちょっとした言葉で意識が変わり、成績が変われば野球人生も変わり、人生そのものも変わるんです。

 だから私は秋季キャンプで最初に金子に言った後、ほかの若い選手たちにも話をしました。『自分の武器は何か。もう一度、考えよう』って。選手はそれぞれ持ち場が違う、役割が違うので、みんな同じようにやっていてもダメなんだっていうことを」

 自分自身の特長を突き詰めて考え、チーム内での役割を認識し、その上で目標を設定すれば、自ずと練習方法はそれぞれ違うものになるはず──。橋上はそのことを成長途上の若手たちに伝え、意識づけをうながしていた。そのなかか

ら山川穂高、外崎修汰もブレイクした。

「設定した目標が違う以上は、その過程が変わってくるのは当たり前」

 これが橋上の考えだ。

 ゆえに、選手が出した結果以上に過程を重視している。すなわち、「練習=過程」を見ていて、意識の変化が感じられたときこそ、コーチとしていちばん手応えがあるという。

「その点、技術を教える技術コーチの役目と、私の役目の違いもあります。たとえば、技術を指導する上では、結果的に練習量が増えることもあるでしょう。でも、私が選手によく言うのは、『そんなに練習するなよ』です(笑)。

 もちろん、技術コーチが課す練習は必要ですけど、ガーガーとあおりつけながらやる練習ではになりません。だから選手には、『練習は量でもないし、時間でもない。結局、どれだけ自分をよく知って、役割を知って、目標設定しているかどうかだよ』と言うんです」

 コーチが選手をあおりつけて練習させている状況は、選手自身で目標を設定していない裏返し。指導者が選手に目標設定を指示したのでは、その気になれないのではないか──。橋上自身はそう考えて指導してきた。

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